本研究の目的は、チュニジアのアラビアン・ナイトとでもいうべき『アル=アルウィー物語集』に関する言語学的・文化的調査を行い、その語りに着目した言語学研究を行うことにある。 アラビア語チュニス方言はチュニジア共和国の首都チュニスを中心に話されているアラビア語方言のひとつである。そのチュニス方言で書かれたのが『アル=アルウィー物語集』(全 4 巻)である。同書にはおよそ 111 の物語が含まれ、著者アル=アルウィーの生き生きとした語りによって記録されている。 この物語集の読解にさいしては、チュニス方言話者の協力が不可欠であり、これまで筆者は現地の協力者とともに同書を読み進めてきた。本研究の目標のひとつは、この物語集に関する調査を完遂することであったが、新型コロナウィルスまん延の影響のため、研究計画初年以外は、現地調査を行うことができなかった。 しかしながら、 研究計画最終年度となる 2023 年度はようやくチュニジア渡航が可能となり、2 度の現地調査を行うことができた。8 月の現地調査(チュニス)では、『アル=アルウィー物語集』第 4 巻の未調査部分(約 300 ページ)の聞き取りを行い、当初の予定を終えることができた。2024 年 3 月は、チュニジア南部(ガベス、タタウィーン)で、南部方言・文化に関して予備的な調査を行うことができた。研究成果の公表として 2023 年度は、アラビア語チュニス方言の語りをテーマとして、 2 本の論文執筆と、1 回の口頭発表を行った。 コロナ禍のため、本研究課題を遂行するにあたりさまざまな困難があったが、多くのチュニジアの方々の協力と支援により、大きな成果を上げることができた。心より感謝を申し上げたい。今後も、研究課題「アラビア語チュニス方言における語りの技法と文法」(基盤研究(C)、22K00548)において引き続き研究を深めていく予定である。
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