研究課題/領域番号 |
19K13196
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
川端 良子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 音声言語研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (50705043)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 参照表現 / コーパス / 会話 |
研究実績の概要 |
会話の中で特定の対象が参照される際、話し手と聞き手が同一の対象を想定していることは、コミュニケーション成立のために不可欠な要素の一つである。そのため、相手が知らない可能性がある対象を会話の中で最初に参照する場面において、対象を同定するための方略(参照方略)が存在することが知られている。本研究は、会話においてどのような参照方略が用いられているかを複数のコーパスを使って調査し、参照方略の選択に影響する要因を明らかにすることを目的としている。 昨年度(2019年度)は、『日本語地図課題対話コーパス(マップタスク)』を用いて,特定の対象が最初に会話に導入される際の言語形式の類型化を行った。本年度(2020年度)は、類型化した表現の中から2つの表現に注目し、詳しく分析を行った。1つは、「(新情報の)分割提示」と名付けた、参照対象の名称の途中に休止を挟む発話の機能の分析である。話し手が分割提示を行った場合と行わなかった場合で聞き手の応答の有無を調べた結果、聞き手が対象を知っているか知らないかで応答の出現頻度が異なることが分った。もう1つは、「メタ用法」と呼ばれる名詞の後に「って」や「という」が付属する表現の使用条件について分析を行った。従来理論によれば、参照対象を直接知らない会話参加者がメタ用法を多く用いることが予想されたが、マップタスクを分析した結果、参照対象を直接知っている話者の方がメタ用法を多く用いていた。さらに、メタ用法が使用された発話を詳しく調べた結果、メタ用法と特定の発話行為との関連性が示唆された。これらの結果について学会で発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス拡大の影響でアノテーション作業者を確保することができず、アノテーション作業が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的に申請書の計画に沿って研究を進める。本年度は在宅で研究・作業を行うことを想定し、作業者の作業環境の整備やオンラインでの打合せにより、アノテーションの遅れに対応する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で旅費と人件費の支出がなかったことが次年度使用額が生じた理由である。旅費がかからなかった理由は、参加したすべての学会がオンライン開催になったため、出張費が生じなかったことによる。人件費がかからなかった理由は、学生に作業を依頼する予定であったが、研究所への出勤が原則禁止になり、作業環境の準備、および作業者の確保ができなかったことによる。自宅で研究を進めるための機材を購入したため、物品費の支出が増えたが、予定していた旅費と人件費に比べると少額だったため、差分が生じた。 次年度使用額は、作業者が自宅で作業を行うための環境整備に使う予定である。
|