研究課題/領域番号 |
19K13198
|
研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
川瀬 卓 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (80634724)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 不定語 / 助詞 / 不定 / 間接疑問 / 副詞 / 古代語 / 近代語 / 分析的傾向 |
研究実績の概要 |
本研究は、不定の「ぞ」「やら」「か」の地域差と歴史的推移、および関連する文法変化を明らかにすることを目指すものである。2020年度における研究業績は、以下のとおりである。
①【発表】「洒落本における不定の「やら」「ぞ」「か」」第85回中部日本・日本語学研究会、オンライン開催、2020年9月12日。②【解説】青木博史・高山善行編『日本語文法史キーワード事典』(分担執筆、担当範囲:項目「副詞」「歴史語用論」)、2020年12月、ひつじ書房。③【論文】「洒落本における不定の「ぞ」「やら」「か」」筑紫日本語研究会編『筑紫語学論叢Ⅲ―日本語の構造と変化―』2021年3月、風間書房
①は『日本語歴史コーパス 江戸時代編Ⅰ洒落本』を用いて、洒落本における不定の助詞「ぞ」「やら」「か」の使用実態について、調査・考察したものである。近世後期江戸語・上方語の共通点と相違点を概観するとともに、「か」を中心として、江戸語における不定の助詞の性質を明らかにした。本発表をもとに加筆修正を行い、③として論文化した。②は日本語文法史研究の重要なキーワードについて、基本的な内容をおさえつつ、最新の知見をも含めてコンパクトに解説した事典である。「副詞」「歴史語用論」の2項目を担当した。 そのほか、2020年度には刊行にいたっていないが、副詞を視点として日本語文法史の問題を考察した論考を2本執筆した。1本は副詞の歴史的変化の事例を類型化して、日本語の時代的動向を示したものである。もう1本は、その具体例の一つである、仮定と可能性想定を表す副詞における呼応の分化を論じたものである。いずれも2021年度上半期に刊行される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響によって、出張や図書館利用が難しいなど、研究活動が制限された。また、遠隔授業をはじめとした様々な業務への対応のために研究時間の確保自体が困難であった。不定の「ぞ」「やら」「か」に関する論文を1本公表できたものの、データ収集や分析作業は、申請時当初の予定より遅れている。ただし、古代語と近代語の違いについて、2021年度に論文を公表する準備が整った点は順調に進展していると言える。以上を総合すると、やや遅れていると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症終息の見通しは立っていないものの、1年間の経験を通して、いくらか研究時間を確保する余裕が出てきた。まだ研究活動に制限のある部分も多いが、日本語歴史コーパス(CHJ)のようにWeb上で利用できる資料を活用して研究を進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、申請時当初予定していた研究会・学会への出張がなくなったほか、学生に研究補助(資料整理など)を依頼することが困難であったため、前年度からの繰越金を含めて40万円以上の次年度使用額が生じた。 2021年度も、いまだ新型コロナウイルス感染症の終息は見えない。研究会・学会などは2020年度に引き続きオンラインで開催されることになると思われるため、出張費に予定していた分を、研究に必要な書籍の購入費用に充てる予定である。また、状況が許せば、感染症対策に十分注意を払ったうえで、学生に研究補助(資料整理など)を依頼することも検討する。
|