研究課題/領域番号 |
19K13198
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
川瀬 卓 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (80634724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不定語 / 助詞 / 不定 / 副詞 / 呼応 / 古代語 / 近代語 / 文法変化 |
研究実績の概要 |
2021年度における研究業績は、以下のとおりである。
①【論文】「副詞「ひょっとすると」類の成立―副詞の呼応における仮定と可能性想定の分化―」(『語文研究』第130・131号、九州大学国語国文学会、2021年6月)、②【論文】「副詞から見た古代語と近代語」(野田尚史・小田勝編『日本語の歴史的対照文法』和泉書院、2021年6月)、③【学界時評】「学界展望 日本語の歴史的研究 2020年7月~12月」(花鳥社Webサイト、2021年6月)、④【講演】「副詞の歴史的研究から日本語文法史研究へ」(『外国語と日本語との対照言語学的研究』第34回研究会(東京外国語大学国際日本研究センター対照日本語部門主催)、オンライン、2021年12月18日)。
①は可能性想定を表す「ひょっとすると」類がいつどのようにして成立したのか、それが仮定・可能性想定と呼応する副詞の歴史の中でどのように位置づけられるのか、副詞の呼応の問題が日本語文法史にどのような示唆を与えるのかについて考察したものである。この成果は、②にも取り込まれている。②は複数の副詞を事例として、「副詞の発達」「副詞の呼応の分化」という2つの観点から、古代語と近代語の相違について論じたものである。③は2020年下半期における、日本語の歴史的研究の動向を整理したものである。④は日本語文法史の重要トピックと関わる副詞をいくつか取り上げ、副詞に見られる文法変化、副詞を通して見えてくる日本語の時代的動向について論じたものである。①②④では、いずれも副詞を視点として日本語文法史にアプローチしている。②と④で取り上げた事例には、「どうぞ」「どうやら」「どうか」など、不定語と助詞によって構成される副詞も含まれており、不定語と助詞の結びつきという点から、古代語と近代語の違いを明らかにした成果でもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
経験の蓄積によって2020年度よりは多少余裕が出たものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、ハイフレックス授業の実施、学期途中での授業形態の変更などの事情が重なり、研究時間の確保がやや困難であった。 不定語と助詞の結びつきという点から、古代語と近代語の違いについて論じた成果を公刊できた点は順調に進展していると言える。一方で、不定の「ぞ」「やら」「か」そのものについては、データ収集や分析作業が申請時当初の予定より遅れている。以上を総合すると、やや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展により、副詞を視点とした日本語文法史の記述に、ある程度の見通しを得ることができたため、先にその書籍化を目指す。その目途をつけたのちに、遅れている不定の「ぞ」「やら」「か」のデータ収集や分析作業を集中的に行う。必要に応じて学生による研究補助も依頼する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響により、申請時当初予定していた研究会・学会への出張がなくなったため、旅費が不使用となった。ワクチン接種がある程度進み、社会の動きも幾分2019年以前の状況に戻りつつあるとはいえ、2022年度も、いまだ新型コロナウイルス感染症の終息は見えない。社会状況を注視しつつ、研究に必要な書籍の購入費用や、学生への研究補助依頼など、適切に執行していく。
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