研究課題/領域番号 |
19K13209
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
門屋 飛央 福井工業高等専門学校, 一般科目(人文系), 助教 (60805878)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本語学 / 五島列島方言 / 日本語史 / 文庫目録作成 |
研究実績の概要 |
本研究は、五島列島において方言と文献の調査を行い、日本語史研究に寄与するものである。具体的には、五島列島方言の包括的記述と五島列島内の文庫の整理・調査を行う。 方言記述のため、2019年度は調査を4回行った。そのうち、3回は宇久町の平方言の調査であり、1回は小値賀町の藪路木島方言の調査である。これまでの調査と今年度の調査の結果をまとめ、平方言の記述文法書を完成させ、博士論文として提出した。平方言を包括的に記述したもののなかから、より深い考察を行う。より深い考察が必要な現象に、当該方言の「進行」の/-wor-/を挙げる。この形式は、子音語幹活用動詞に接続する際、「かっゴル」(書いている)や「かっボル」(書いている)のように、「ゴル」や「ボル」という形式で用いられる。まず、この形式について深い考察をするとともに、今後は宇久町の他地域へと方言記述を広げ、平方言との対照を行う。 小値賀町藪路木島は、宇久町の近隣の地域である。この藪路木島方言には、平方言にはみられない行為指示形式/(-a)-Ns-/がみられた。この形式は、親しい目上に対する形式であるほか、直接働きかけるときにしか用いられない。この形式について記述し、『坂口至教授退職記念日本語論集』(近刊)に寄稿した。論文の題目は、「長崎県小値賀町藪路木島方言の/(-a)-Ns-/を用いた行為指示について」である。同じ五島列島の方言でも、島によって文法現象にちがいがあることがわかったことは、重要である。 文献調査については、予備調査中であり、次年度以降に実施できる調査先を検討している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、平方言の記述文法書を完成させた。また、藪路路木島方言の調査も行っている。文献調査は、予備調査がまだ終わっておらず、調査先の選定を行っている段階である。研究期間の初年度は、計画の基礎段階である。基礎段階はできており、進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、前年度作成した平方言の記述文法書をもとに、宇久町の他の郷に調査を行う予定である。しかし、新型コロナウイルスの感染者拡大の影響により、臨地調査の実施計画を変更する。2020年度の前期期間の調査は中止し、後期期間の調査は状況を見て判断を行う。前期期間は、臨地調査をする代わりに、これまで収録した自然談話の書き起こしを重点的に行う。そして、調査項目の見直しを行い、より効率的な調査につなげる。
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