研究実績の概要 |
移動様態動詞(e.g. float, roll, bounce)の統語構造について研究している。特に動詞句削除や擬似空所化、do so代用などのテストを用いて、この動詞類が非対格動詞として用いられる場合(1)の動詞句構造と非能格動詞として用いられる場合(2)の動詞句構造を調査している。 (1) The boat floated into the cave. (2) The boy floated (in place).
現時点では、次の3つの可能性が示唆される。(i)Alexiadou, Anagnostpoulou, and Schafer (2015)などの分析と異なり、becomeフレイバーの軽動詞を想定する必要性があること。(ii)移動様態動詞の非対格用法には2種類の構造の存在が認められること。(iii) Folli and Harley(2019)などで想定されるManner Incorporationには2つのパターンがあること。(つまり彼らが想定するパターンの他にもう1パターン存在すること。) (i)の可能性の追究は、研究課題である「機能投射の必要性」の解明に直接貢献することになる。また(ii)の可能性は、非対格動詞の構造の新たな分析を提供する点で有意義である。また(iii)の可能性の追究は、Matushansky(2006)やFolli and Harley(2019)で論じられているHead Movementのパターンにおいて、論理的に可能な新たなパターンの存在を例証することに繋がるという意味で価値がある。
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