研究実績の概要 |
昨年度から引き続き移動様態動詞(e.g. float, roll, bounce)の統語構造を研究した。特に本年度は、これらの自動詞形(1)と使役形(2)を用いて動詞句削除や擬似空所化、do so代用などのテストを行なうことによって、これらの動詞句構造がどのようなものであるのかを調査した。 (1)The balls rolled into the cave. (2)The strong wind rolled the balls into the cave.
主要なテスト結果として、(1)(2)の異なる項交替間の動詞句削除は、使役形を先行詞にして、自動詞形を削除する場合は許されるが、逆の場合(つまり自動詞形を先行詞にして、使役形を削除する場合)は許されないことがわかった。この結果から、使役形の構造は、自動詞形の構造を内部に含んでいることが支持される。またこの構造が正しい限りにおいて、Alexiadou, Anagnostpoulou, and Schafer (2015)などの分析と異なり、becomeフレイバーの軽動詞を想定する必要性があることが示唆される。また更なる調査結果として、使役形を先行詞にして自動詞形を省略する場合でも、主語のanimacyによって省略の可否に対比が生じることもわかった。具体的には、主語がinanimate object (e.g. natural force) の場合、削除することはできるが、主語がanimate agentの場合、削除することはできないことがわかった。この結果から、後者の使役構造は前者の使役構造とは異なる可能性があることが示唆される。
|