研究課題/領域番号 |
19K13221
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
菅原 彩加 早稲田大学, 理工学術院, 専任講師 (80755710)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 意味論 / 語用論 / 議論中の質問 / 作用域 / 焦点 / 第二言語習得 |
研究実績の概要 |
本研究は、解釈が曖昧な文を外国語学習者がどう解釈するかを調査している。特に、意味論・語用論の立場より「議論中の質問 (Question under Discussion, QUD)」という概念が及ぼす影響に注目をしている。QUDは近年第一言語獲得分野等で注目を集めており、母語話者・外国語学習者両者において解釈に影響を及ぼすかの調査は重要である。本研究の焦点は「文の曖昧さ」に対する知識である。 曖昧な文の例として以下を挙げる。"All the horses didn’t jump over the fence."この文の解釈は「一頭も跳ばなかった (All > Not)」と「全頭が跳んだわけではない (Not > All)」の間で曖昧となる。しかし会話におけるQUDが明示されていると、理論上どちらかの解釈のみが適切となる。例えば、QUDが「全頭が跳んだのか、そうではないのか」である場合、このQUDへの回答は「Not > All」解釈の方が適切となる。同様にQUDが「一頭でも跳んだのか、そうではないのか」である場合、このQUDへの回答は「All > Not」の方が適切となる。 本年度は上記のような量化子の作用域が関わる文に加えて、関連する焦点が文法的に制限されていない"Free association with Focus"の一つとされる"Always" "いつも" といった副詞を持つ文の解釈とQUDの関係を調査した。まず、自然発話においてQUDが解釈に影響を及ぼすかを確認するため、母語話者における使用状況についてコーパス分析を行い、多くの文脈においてQUDと解釈が相関していることを確認した。この観察が一般化できるかどうかを確認するため、当初対面式の実験を計画していたが、現在オンラインで実施できる実験を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、本年度は母語話者(英語話者・日本語話者)におけるQUDと解釈の相関について調査を行い、来年度は学習者におけるQUDと解釈の相関について調査を行うとしてきた。本年度は母語話者におけるQUDと解釈の相関についてコーパス分析により調査ができたため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初、学習者に対する実験は対面式の実験を行うことを計画していたが、現在難しい状況となったため、来年度に行う実験の計画を練り直すことが必要となった。オンラインでの実験を企画しており技術的な課題が残っているが、従来の計画通り来年度に学習者を対象とする実験を行いたいと考える。 計画書作成当初には予定していなかった "Always" "いつも" といった副詞を使用した曖昧な文を新たに研究対象として加えることとなった。また、 "only" "だけ" "~しか…ない" といった取り立て詞を使用した曖昧な文も研究対象とする予定である。 実験方法は、オンライン上のプラットフォームを使いアンケート形式の調査を作成する。この時に、被験者が回答するまでの時間を計測できるプラットフォームを使用する予定である。文の解釈がQUDによって影響を受けるかを調査するためには、被験者に集中して文脈を読んでもらうことが必要となる。オンラインでの調査において、被験者が文脈を無視せずにいることを保証するのは難しく、この点が実験デザインの課題となる。可能な方策としては、文脈を読んだ後に画面を切り替えて一度内容理解問題に答えてもらい、その上で対象となる文の文法性/容認度/真偽を回答してもらう、といった対策が考えられる。被験者のリクルートはオンライン上で行い、謝礼は郵送またはEメールでギフト券を送付するなどの対応を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が当初計画より若干少なかったこと、また実験の計画に当初より時間がかかり実験実施を来年度に持ち越したことにより、次年度使用額が生じた。実験をオンラインで行うことにより謝礼の郵送費などの当初計画していなかった支出も生じることが予測されるため、次年度持越し分は当初の計画通りの実験被験者への謝金と諸経費のために使用する予定である。
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