研究実績の概要 |
本研究では、見た目上は同一の文であっても文脈により意味解釈が複数存在するものについて「曖昧な文」と呼ぶ。この「曖昧な文」について、外国語学習者(英語学習中の日本語話者)が学習中の言語の曖昧な文を母語話者のように解釈できるのかについて研究してきた。母語話者による曖昧な文の解釈は「議論中の質問 (Question under Discussion, QUD)」という語用論的概念に大きな影響をうける。本研究では母語話者および学習者におけるQUDの影響を、実験により検証した。 昨年度までに、(1)焦点が文法的に制限される "only" を使った英文と、(2)焦点が文法的には決まらないが文脈により好まれる解釈が変化する"always"を使った英文と、(3)尺度推意の計算が文脈により行われやすくなる英文を用いて曖昧な文と、(4)解釈が曖昧となる全称量化詞と否定辞を含んだ英文についての実験を行った。 本年度は、これまでに行った実験について分析を行い、複数の研究発表を行った。実験結果から、学習者においてもQUDが解釈を左右する重要な要素となることが示唆された。さらに、本実験において検討していた、英語の運用能力や会話の操作能力と、QUD操作に対して母語話者と同じように解釈する割合との間に大きな相関がみられないことが示唆された。後者の観察については、研究発表時に行った他の研究者との議論により、見るべきより適切な指標が存在するかもしれない点、それらを考慮した上で相関があるかを吟味する実験を行う必要がある点を確認した。また、焦点副詞に関するトピックについて、外部からの講師を招いた講演会を6月に行った。
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