研究実績の概要 |
本研究には(1)付加詞条件(付加詞内部の凡ゆる要素の抜き出しを禁止)の普遍性に関する通言語的検証を行うこと、(2)付加詞条件に従う例と従わない例を原理的に捉えられる派生メカニズムを解明すること、以上2つの研究目標がある。研究期間延長となる2023年度は2つの課題に取り組んだ。 まず、本プロジェクトの結びとして、出版の遅れていた日本語の丁寧語に対する統語的考察を論文にまとめた。丁寧語が聞き手との一致現象を示す要素であり、それが主節現象であるという先行研究への反例を発掘し、丁寧語「ます」の埋め込み領域下での認可条件について研究を進めた。発掘したデータに共通する項目として、主節領域における敬語表現との相互作用が挙げられる事実を報告し、これが一種の敬語の呼応表現(一致表現)に相当する可能性を主張した。本内容に関わる発表をThe Workshop on Theoretical East Asian Linguistics 13(於:National Taiwan Normal University, Taiwan)で行った。その後、補足修正したものを論文としてまとめ、『福岡言語学会50周年記念論文集』へ投稿し、査読を経て掲載されることとなった。 本年度取り組んだもう一つの課題は、andで接続される等位構造のうち、第1等位節が条件性を、第2等位節がその帰結を表す例文の派生についての研究である。これらの例文は、しばしば(andを伴う)条件接続構文と呼ばれ、一方の節からの項の抜取りを許すため等位接続制約の例外として報告されている。条件接続構文が通常の条件if節と同様に派生される可能性を提案し、2023年9月開催の長崎言語研究会において、その素案を発表した。また、その内容を補足修正したものが2024年度の日本英語学会Spring Forumに採択され、2024年5月に発表予定である。
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