研究課題/領域番号 |
19K13226
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
堀内 ふみ野 大東文化大学, 経済学部, 講師 (80827535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 用法基盤モデル / 言語習得 / 前置詞 / 認知言語学 |
研究実績の概要 |
研究実績の概要は、以下のとおりである。 第一に、英語前置詞の意味・機能・習得プロセスについて、認知言語学、用法基盤モデル(usage-based model)、相互行為言語学の枠組みで分析した。その帰結として、意味を担う単位は単一の「語」より大きな構文的単位であり、前置詞に関する知識は言語使用の文脈から切り離せない形で蓄積されているという「構文的意味論」を提案し、その研究内容を、神戸大学国際文化学研究推進インスティチュート(Promis)主催セミナー(2022年6月)にて発表した(題目「前置詞の意味はどこにあるのか-構文的意味論の提案-」)。セミナーでは、コメンテーター3名および参加者との意見交換を通して議論を深めた。 第二に、親子会話コーパスのデータに基づき、英語前置詞の習得プロセスについて、前置詞ごとの相違に着目して分析した。より具体的には、対話的な相互行為における各前置詞の使われ方の違いに応じて、同じ品詞の語であっても習得プロセスに違いが見られることを論じた。その成果をまとめた論文が、小川芳樹・中山俊秀(編)『コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論3』 に収録され、出版された(2022年11月)。 第三に、これまで英語前置詞を対象に行ってきた文脈依存の構文形成に関する研究の手法・成果を日本語にも応用し、インターネット上の「打ち言葉」で見られる構文変化について分析した。分析を通して、言語使用の環境や文脈に依存して構文が形成されることを示し、その成果を、第47回社会言語科学会研究大会(2023年3月)ワークショップにて発表した。 以上のように、英語前置詞の習得プロセスを対話的な相互行為の観点から分析した成果をセミナーや論文で発表するとともに、その成果や手法を日本語の現象にも応用することで、研究を発展させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果を論文として発表するほか、隣接分野の研究者も参加するセミナーでも発表し、議論を深めることができた。また、研究の手法・成果を日本語の現象にも適用して分析を行うなど、応用範囲を広げられている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、コーパスを用いて、相互行為に基づく英語前置詞の習得プロセスに関する研究を推進する。それとともに、研究の手法・成果を応用し、日本語における新たな構文の形成や変化のメカニズムについても分析も行う。具体的には、(i)日常会話に現れる文法的に不完全な「文」の用法の分析、(ii) 打ち言葉における構文化のメカニズムの分析を推進する。(i)の成果は2023年7月の国際語用論学会(IPrA)で発表する予定である。(ii)については論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、参加した学会の多くがオンライン開催であり、旅費等の支出が予定より大幅に少なくなった。次年度は複数の学会で対面開催が予定されているため、その旅費や参加費として使用する予定である。
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