研究実績の概要 |
本研究課題は、平成28-30年度にかけて採択された研究課題(16K16858)を継続発展させることを目的としている。その初年度にあたる令和元年度は、その研究課題の下で行った研究成果の論文化に取り組んだ。 ひとつは2016年の口頭発表 "The Development of the Simple Present Tense in Adverbial Time Clauses in Modern English" に基づくものであり、渡辺(2020)として論文を発表した。17-18世紀を対象に、before, till, untilで導かれる時間節の動詞が仮定法現在形から直説法現在形になる様子を実証的に明らかにし、また動詞の語形選択に対する規範文法の影響の有無について考察した。その結果、次の3点を明らかにした。(1) 直説法は17世紀末までに全用例の過半数を占めるまで拡大していた;(2) 動詞のタイプ頻度が仮定法では減った一方、直説法では増えた;(3)この問題について規範文法の積極的な影響は認められない。これは近接未来表現の発達に直接関わる問題ではないものの近代英語期の未来表現の用法における重要な変化であり、広い意味では同じ領域に位置する問題であるため、本研究課題の一環として行った。 もうひとつは2018年の口頭発表 "Immediate future expressions in Early Modern English: the rivalry between be about to, be upon the point of, and be ready to" その他に基づくものである。特に16-17世紀のbe ready toを取り上げ、その近接未来表現としての用法を探りつつ、結果として定着に至らなかった理由を定型性の観点から考察した。こちらは令和2年度に論文集の1章として国内の出版社より刊行される予定である。
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