研究実績の概要 |
令和2年度は研究成果として次の1件を発表した:日本英語学会第38回大会口頭発表 「アメリカ英語におけるfixing toの発達」および同タイトルでの発表論文(JELS 38、148-154)。アメリカ英語に特徴的な近接未来表現fixing toについて、その用法の発達や、形式の違い(fixing to, fixin' to, finna)による差違について、The Corpus of Historical American Englishから収集したデータに基づいて先行研究の主張を再検討した。その結果、次の点が明らかになった。まず、「意思」から独立して純粋に文法化した用法が拡大し始めるのは1920年代以降であるが、現在でも「意思」の用法がメインである。また、fixin' to, finnaという音声的に縮約の進んだ形式ほど文法化が進んでいるとする先行研究の主張は確認できなかった。実際には、20世紀後半以降、頻度において優勢になるのはfixing toであった。この変化の背景には、アメリカ文学におけるアフリカ系アメリカ英語の表現法の変化など文体的な要素が考えられ、文法化とは別の問題と解釈するのが妥当である。 令和元年度の研究実施状況報告書において、令和2年度に刊行予定と記した論文は、新型コロナウイルス拡大の余波を受け論文集自体の刊行が遅れているが、令和3年度には刊行される段取りである。
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