本プロジェクトでは、第二言語としての日本語の文章読解を語用論的観点から捉え,日本語学習者は,どのようにして書き手の意図に沿ったコンテクストを選び,書き手の意図した意味を理解しているのか,その際,どのような困難点があるのかについて検討を行った。また、最終年度には、研究によって明らかとなった事柄を活かした読解指導の試みを行った。 研究期間全体を通じて、指示詞や代名詞といった語用論的推論の必要性を明示的に示すものに比べて、アドホック概念(語彙的拡張・語彙的縮小)、自由拡充といった語用論的住韻の必要性を明示的に示さないもののほうが誤った解釈が行われやすいことが明らかとなった。また、語用論的推論が求められる文章の読解では、複数のコンテクストを想定し,それぞれのコンテクストを文章に当てはめて,何れのコンテクストを用いた解釈が正しいのかの判断を行うことが重要であることが明らかとなった。さらに、初めに得た解釈に対して意味的なつながりが保てないような新たな情報が与えられた場合、解釈の修正を行う柔軟性が求められることが明らかとなった。また、語用論的推論に焦点を当てた読解指導を行うことで、1)同じことばや似た意味の言葉に注意しながら読むこと、2)省略されている言葉が何かを考えながら読むこと、3)言葉の意味がこの文章ではどのような意味で使われているのかを考えながら読むこと、4)文章全体の構成・流れを考えながら読むこと、5)途中でわからなくなったら前に戻って読み直すことの5つの読み方への意識が高まることが明らかとなった。
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