研究課題/領域番号 |
19K13234
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柳本 大地 広島大学, 森戸国際高等教育学院, 特任講師 (20826359)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 漢字単語 / 眼球運動 / 日本語学習者 / 単語認知 / 非漢字圏 |
研究実績の概要 |
2020年度は, 日本国内の大学に所属する非漢字圏の母語を有する上級の日本語学習者を対象とした実験調査を実施し,分析した。その結果について「JSL漢字学習研究会」にて発表した。この実験調査について現在論文の執筆を行っている。また,非漢字圏の母語話者の眼球運動の特徴と比較するために漢字圏の上級の日本語学習者に同様の実験調査を行った。この調査結果について,データの整理,分析を進めている。そして,非漢字圏の学習者および,漢字圏の学習者に対し,漢字学習ストラテジーに関する調査を行った。この調査では併せて自己効力感に関する質問も行なっており,学習者が漢字単語を学習する際の心的側面や,母語背景による違いを見出すことを目指す。 これまでの実験調査は,二字漢字単語を構成する漢字と単語そのものの意味との結びつきに観点を置いて,調査を行っており,次の実験調査では,よりマクロな分析として,漢字そのもの特徴を考慮に入れた実験を行う。現在はそのための準備を行っている。当初の予定では,海外で日本語を学習する上級の日本語学習者を対象としたを行う予定で計画をしていただが,現状では実施が難しいため,中級学習者,あるいは日本の滞在歴が少ない学習者を対象とした実験調査を行い,比較て的に考察を進める予定である。 また,文や文章で提示された際の視線の停留やサッカードを分析し,非漢字圏の日本語学習者が漢字単語からどのように情報を読み取っているのか引き続き検討を行っていく予定である。 そして,研究の成果としてより学習者の情報処理の様相を明らかにするとともに,その認知的側面にあった漢字学習方法を提案することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の国内外の感染状況により,当初の計画通りの実験調査を行うことが困難となっている。特に漢字の処理経験の豊富な日本国内の学習者と,海外で日本語を学習する学習者との比較により,漢字の処理経験の違いという観点から考察予定であった部分について調査が進んでいない。この点については,現状で可能な観点から調査を行うように調整するとともに,オンライン環境を活用した実験・調査を企画し,研究課題の達成を目指す。具体的には,これまでに明らかにした日本国内の学習者の特徴に基づいた仮説を構築し,反応速度を指標としたオンライン視覚実験調査を行う。
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今後の研究の推進方策 |
実施済みの実験1,2の結果及び学習者のストラテジー及び自己効力感に関する分析結果について,広く公開すべく,論文の執筆を行う。また,実験3,4の実施を行い,最終的な結論を見出す。
学習者の認知的側面を考慮した漢字及び漢字単語の記憶研究などを行い,漢字学習に活用可能な示唆を提言する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたすべての海外調査を行うことができなかった。この旅費に関わる部分として次年度使用額が生じた。これについては次年度にも同様の状況が生じる可能性があるが,オンライン環境での調査を補充する予定としており,そちらの実施計画に充当する。
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