本研究では、日本人学校や補習授業校といった在外教育施設に「通うことができなかった」「通うことを選択しなかった」「通うことをやめてしまった」子どもたちの日本語習得の実態に着目する。そのために、子どもの成長を一番近くで見守ってきた親と子ども本人へのインタビューをとおして、以下の三点を明らかにすることを目的としている。(1)子どもたちは、これまでどのように日本語を学んできたか。(2)日本語との関わりは、子どもたちの成長において、どのような意味をもっていたか。(3)子どもたちの親は、わが子の日本語学習をどのように見守ってきたか。以上の点を明らかにすることにより、今後子どもたちへの日本語教育は何をめざし、どのようにおこなわれるべきなのかを提案する。 本年度は、以下の二点に取り組んだ。 1、研究成果の公表:これまでの研究成果をまとめ、シンガポールで暮らす日本にルーツをもつ子どもたちに関わる教師や保護者を対象としたセミナーにて公表した。また、「シンガポール日本語教師の会」の協力のもと、シンガポールで成長した日本にルーツを子どもたちから届いたビデオメッセージを視聴し、セミナー参加者との意見交流をすることができた。さらに、教職課程で学ぶ大学生を対象としたセミナーでは、教師養成の視点から研究成果を公表した。 2、日本語教育実践のデザインと実施:これまでの研究成果をふまえ、実際にどのような日本語教育の実践が可能か検討するために地域の日本語教室にて授業実践をおこなった(新型コロナウイルス感染拡大のため、オンラインにて実施)。子どもたちにとっての日本語学習の意味に着目した実践をデザインしながら、現在も実践を継続中である。
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