研究課題/領域番号 |
19K13246
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
春口 淳一 大阪産業大学, 国際学部, 准教授 (70461605)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エンロールメント・マネジメント / 産学官連携 |
研究実績の概要 |
本研究は、高等教育機関における留学生の獲得・支援のあり方について、特に産学官が連携してこれに当たる際の課題を実際の取組み事例に基づいて検証し、また改善のための提言を目指すものである。調査の対象には、こうした枠組みがすでに構築されている地域を選定した。つまり、「留学生交流拠点整備事業」や「住環境・就職支援等留学生の受入れ環境充実事業」など文部科学省の支援事業にも採択を受け、事業遂行の中心的役割を果たす支援センターとその母体となる支援コンソーシアム(21団体が加盟)がそれだ。 調査者はこれまで一大学の留学生支援事業を留学生エンロールメント・マネジメントをキーワードに教学支援重視の立場から、その課題を洗い出して整理、提言をしてきた。これをより広範囲の取り組みに対しても当てはめて、論究することを目指す。 科研費採択1年目となる2019年度は、協力者を産学官に広く求め、研究調査のネットワークを構築することにあった。「学」を皮切りに協力者の裾野を広げることを目指し、まずは支援センターのセンター長と同コーディネーターへの面会、インタビューに成功した。並行して当該地域の大学教職員及び、日本語学校の教職員にも研究の趣旨等を伝え、予備調査としてインタビューも行った。 また対象地域ではないが、外国人犯罪を取り締まる現職の警察官へのインタビューも2度実施した。負の面にも積極的に知見を求めることで、留学生支援において留意すべきポイントを多角的に考えることができるだろう。 また「産」については当地の企業経営者2名の紹介を受けており、次年度から調査に着手する予定である。いずれも外国人材の雇用に積極的に取り組んでいる。加えて当初想定していなかった協力者として、対象地域の離島でNPOとして観光案内に従事している人物と知己を得た。2年目の本格的調査へ弾みをつけたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績にも書いたように1年目となる2019年度は、調査協力者を集めることをその目的としている。当初計画として支援センター長と面会し、今後の協力を仰ぐことを第一に考えていたが、同センターコーディネーターを交えて1時間半近いインタビューを行うことができた。支援センター設立までの経緯の確認やセンターの報告書に基づく、その実績や自らが考える成果、課題など有益な情報が得られた。またセンター報告書の活用については文部科学省の内諾を必要とするとあり、その手続きを終えている。 一方で大学教職員や日本語教職員への協力要請、予備調査の実施は1年目から実施を期待していたものであった。インタビューでは、広報事業等について批判的な意見も寄せられたており、留学生エンロールメント・マネジメントを軸に、その主張を論文に昇華させる予定だ。 産業界からの協力者確保には不安があったが、伝手を頼って2名の協力を得られたことは幸いであった。1年目は関係構築までであったが、今後インタビューを実現する予定である。 現職警察官を対象とした調査は計画段階にはなかったが、19年8月、20年1月の2回にインタビューを行い、留学生の問題行動を取り締まる側の立場から具体的な意見や教育関係者への要望を聞き取ることができた。追跡して調査するとともに、その成果をまとめた上で、対象地域の警察にも協力を今後求めていく。 また離島における観光業での留学生の活用については、支援センターの就職支援にはこれまで含まれていなかった取り組みであり、現場の工夫と苦労を吸い上げることで、新たな連家に向けた具体的な提言ができるのではないか。現在は協力者を介して島の広報物を送付いただき、特に留学生や外国人材を取り上げたものを収集している段階である。 最後に研究倫理に関して、所属する大阪産業大学研究倫理委員会に所定の申請書を提出し、その承認を得たことを付記する。
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今後の研究の推進方策 |
警察官へのインタビューをもとにした研究発表を2020年11月に開催を予定していた国際学会へ応募すべく準備をしていたのだが、コロナ禍のため1年見送りとなってしまった。そこで、初年度の研究成果としてまずは所属大学の紀要への掲載を目指す。同様に予備調査として行った大学、日本語学校関係者等へのインタビュー成果も、別にまとめる予定である。上記研究成果は、新規の協力者獲得のためにも活用する予定である。 離島を含めた現地調査は、当分は凍結せざるを得ない。特に産業界における協力者には高齢の方も含むため、オンラインでのやり取りが可能であるか模索してみたい。まずは電話等で研究の趣旨などをお伝えし、継続しての協力を要請しているところである。 19年度中にインタビューに成功した協力者については、遠隔での追跡調査によって、先の調査での疑問点などをフォローアップしていく予定である。また、世界的に人の流れがせき止められた状況にあって、帰国しなかった(帰国できなかった)留学生への支援はどうか、一時帰国して再来日ができずにいた留学生のケアはどうか、先方の本来の業務にも配慮しつつ、今だからこそ調査すべき課題も新たに設定し、調査を計画・実行するつもりである。オンラインによる遠隔授業の進展が留学生支援、さらには留学制度そのものにどのような影響を与えたのかについても目を向けたい。 大学関係者を中心にそのネットワークを拡大することも2年目の目標である。特に産学官連携を見ていく上で、「官」である県や市の国際課やハローワークなどから調査協力者を得ることが重要である。これについては、19年度に構築したネットワークを介して実施する予定である。また冒頭に触れた警察官へのインタビューを研究業績としてまとめることは、当該地域の警察関係者に協力を要請するためのきっかけ作りにもなるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
協力者の都合から、2019年度においては一部予定していたインタビュー調査を実施できなかった(1件)。そのため、調査旅費1回分相当を次年度に繰り越す形となった。 繰り越したことで、2020年度は前年度とほぼ同額を用いることができる。上半期の現地調査は新型コロナウイルスの影響から実現は望めないが、下半期に状況が許せば前年度以上に積極的に調査に赴きたい。特に新たな調査計画として、離島での現地調査を今後企画していくことから、交通費として用いる金額は前年度以上になるだろう。有効に活用したい。 また、もし1年を通して出張が難しい状況にあれば、可能な限りオンラインでの調査でこれを補い、収集したデータを文字化する費用に充てるつもりだ。この場合は、新規協力者とのインタビューは限られるだろうが、既に初年度に面識を得ている協力者、特に大学・日本語学校関係者については、オンラインでのインタビューについても協力が期待できることから重点的に行い、得られたデータの文字化作業に研究費を積極的に振り分けるつもりだ。
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