研究課題
本研究の目的は、外国人留学生対象の日本語教育において高次能力育成型の反転授業を実施し、その効果検証及び実践モデルを構築することである。本研究で行う分析の当初計画では、予習動画視聴率、アカデミックCan-do Statement(以下CDS)、反転授業に関する質問紙調査(以下SQ)による学習成果分析、半構造化インタビュー(以下SSI)及びSQによる反転授業に対する学習者特性分析であったが、COVID-19の影響により、前提となるオンサイトでの対面授業とオンラインでの事前学習が、事前学習及び対面授業(同期型遠隔授業)がともにオンラインとなり、研究方法・分析の再設計が必要となった。そのため、今年度は従来型の反転授業(以下反転①:2019年度データ)とオンライン型の反転授業(反転②:2020年度データ)の学習形態の違いによって、学習効果に差があるかの調査を行った。その結果、まずアクセスログによる講義動画視聴率では、反転①が全体平均で83%であったのに対し、反転②は87%であり、大きな差は見られなかった。また、予習動画視聴率とCDSとの相関関係は反転①は0.435であったのに対し、反転②は0.542で、ともに中程度の正の相関があることがわかった。そして、反転①と反転②のCDS及びSQによる満足度の平均値の比較では、CDS、SQともに2つのグループ間に有意差は見られなかった。予期せぬ授業形態の変更により、研究計画の変更が余儀なくされたが、今年度の分析により、授業形態(対面/オンライン)が視聴率、CDS、SQに影響を与えないことがわかった。そのため、今後は引き続きデータを収集し、分析の精度を上げ、アカデミック日本語における「高次能力学習型」反転授業の有効性を検証していく予定である。
3: やや遅れている
本研究では、高次能力学習型反転授業の実践を行い、その実践で得られたデータを基に学習成果分析(反転授業未実施時と実施時のアカデミックCan-do Statement(以下CDS)の比較分析やアクセスログによる講義動画視聴率とCDSとの相関分析等)、学習者特性分析(アンケート及び半構造化インタビューによる質的分析)を行うことによって、その有効性の検証を行う。本年度は、調査の2年目として、上記学習者特性分析(アンケート及び半構造化インタビューによる質的分析)を行う予定であったが、COVID-19により遠隔授業の実施に変わり、当初計画の変更を余儀なくされた。当初計画では従来型のオンサイトの対面授業とオンラインによる事前学習で実施予定であったが、対面授業が同期型遠隔授業に変わり、その授業方法の変更による影響を考慮に入れる必要が出てきたため、本年度は従来の反転授業と遠隔授業とオンライン事前学習によるオンライン型反転授業の比較分析を行った。その結果、学習成果分析ではその2つ反転授業方法の教育的影響差は確認されなかった。そのため、当初計画の2年目に行う予定であった半構造化インタビュー分析及び学習者特性分析を次年度に行う予定である。
次年度(2021年度)は、これまでに得られたデータをもとに、データの信頼性を上げるため、データ収集を引き続き行い、それらを基に分析を行っていく予定である。具体的には、講義動画視聴率、アカデミックCan-do Statement(以下CDS)、反転授業に関するアンケート調査による学習成果分析(量的分析)はデータの信頼性を引き続き上げるため行い、本年度は、昨年度に行えなかったSCAT(Steps for Coding and Theorization)による半構造化インタビュー分析及び質問紙調査による反転授業に対する学習者特性分析を行う。具体的には、LMSにeポートフォリオとして蓄積された学習成果物、学習過程を適宜参照しながら半構造化インタビューを行い、その後、データの文字起こしを行い、その基礎データに対して多重的同時並行の継続的比較分析(4ステップ・コーディング、ストーリーラインの記述)を行うことによって、学習者の反転授業という教育方法の捉え方、反転授業の中での学習の進め方、学習のプロセス、学習意識の変容過程をまとめる。そして、学習者特性分析では、得られた結果を構造方程式モデルを用いて分析し、反転授業に対する学習者の主体的評価だけでなく、どのような学習者が積極的にシステムを利用し(あるいは使用せず)、肯定的/否定的評価をしているのか、どのような学習者特性が反転授業の教育成果に影響を与えているのか、因果モデルの形成を行う。以上の分析結果及び研究成果は、随時学会等で発表を行い、フィードバックを得ながら、研究を推進していく予定である。
理由:概ね計画通りに予算を執行したが、発表を予定していた学会が中止またはオンライン開催になり、交通費が必要なくなったこと、消耗品、インタビュー謝金等の項目において一部使用しなかっため、次年度使用額が生じた。使用計画:今年度の学会発表による旅費、そして、インタビュー調査人数を増やし、その謝金として使用する予定である。
すべて 2021 2020
すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)