本研究の目的は、外国人留学生対象の日本語教育において高次能力育成型の反転授業を実施し、その効果検証及び実践モデルを構築することである。具体的には、予習動画視聴率、アカデミックCan-do Statement(CEFRをもとに作成、以下CDS)、反転授業に関する質問紙調査による学習成果分析、半構造化インタビュー及び質問紙調査による反転授業に対する学習者特性分析を行い、効果を検証する。 研究最終年度の2023年度は、本研究のまとめを行った。本研究の全体の成果としては、①予習動画視聴ログ分析においては、概ね全体を通して80%を超えているが、動画の内容に関しては既有知識に関するものは視聴率が低く、即効性・具体性の高いスキルに関する動画の視聴率が高いこと、一方動画の時間に関しては、動画時間が長いものほど視聴率は低く、一定の視聴率を確保するためには9分以内が望ましいことが示唆された。次に、②CDSを用いた学習成果分析に関しては、反転授業実施クラスと未実施クラスのCDS比較では、CEFR Aレベル(基礎段階の言語使用者)では差はほとんど見られなかったが、CEFR B/Cレベル(熟練した/自立した言語使用者)及び全体平均では差が見られた。そして、③半構造化インタビュー及び質問紙調査では、学習者は反転授業の学習形態に関しては特に負担感はなく、アクティブラーニング形式の授業の満足度は高いこと、動画視聴に関しては隙間時間に倍速で視聴して重要なところのみ繰り返し視聴していること、発表に関しては、概ね学習者は最初は予習動画の重要性はあまり理解しておらず、また、発表の振り返り等で自身のビデオを見直すことに抵抗感を持っていたが、徐々に授業形態にも慣れ、予習動画を見て発表の準備をすること、それから振り返りをすることの重要性を認識するようになることがわかった。
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