研究課題/領域番号 |
19K13248
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
安達 万里江 関西学院大学, 国際学部, 講師 (10823867)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 中級日本語 / 作文評価 / パフォーマンス評価 / ルーブリック / 内容面の評価 / 独自性 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語中級レベルの学習者によって書かれた文章をデータとし、「内容面」を対象に評価研究を行う。そして、文章の内容面を評価する際、どの人・言語・教育現場にも起こり得る「評価の不一致(ばらつき)」という問題解決に貢献することを研究目的とする。 令和元年度は、先行研究レビューによる①理論考察および②予備調査を実施した。①理論考察では、国内外における「外国語教育研究」や「教育評価研究」等の分野より先行研究レビューを進めた。それを基に「内容面」を「一貫性」と「独自性」に絞り込み、試案となるルーブリックを作成した。②予備調査では調査前に研究協力者を招集し、事前にルーブリックの公開や調査の手順を説明した。研究協力者からの意見も踏まえ、Webによる作文評価の調査を実施した。評価対象となった作文データは、「多言語母語の日本語学習者横断コーパス」(I-JAS)より11編を抽出した。そして、研究協力者の日本語教員15名より得られたルーブリックによる評定および内容面の評価理由(自由記述)をデータとし、分析した。統計分析により評価のずれと一致を確認した結果、最も評価のずれが大きいのは内容面の「独自性」であることがわかった。さらに、内容面「独自性」で評価のずれが大きかった3編のデータは、評定結果上位3編であったことも確認できた。その3編の評価理由の中で頻度が高く、共起する使用語を計量分析ソフト「KH Coder」によって確認した。その結果、低評価の評価理由からは、ルーブリックを評価基準(能力記述文)を改訂すること、高評価の評価理由からは、評価する前の段階において、高評価の作文例と、その評価理由を予め評価者に示しておくことが評価の不一致を減らす改善策であることが明らかとなった。令和2年度は、ルーブリックの改訂を行った上で、本調査(量的研究)と学習者を加えた評価活動(授業実践)を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「授業実践の開始」のみ年度内で未達成であったが、それ以外は当初計画していたとおり全て実施された。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今年度の計画は以下のとおりである。1.調査の継続、2.学習者を評価者に加えた評価活動(授業実践)の開始、3.調査データの分析、4.学会等における研究発表、成果公表、5.学会誌等への論文投稿、6.研究協力者に向けた研究成果の途中報告、7.ワークショップの企画・実施 (2)研究計画の変更と課題 【変更点】調査データの収集に関して、当初は、会場を手配し、評価者を集めて実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言等による社会情勢の変化に伴い、インターネット上で調査を行うことを主軸とする。 【課題】 当初、日本語教員・学習者双方による教室内での授業実践を行う予定であった。しかし、現在の授業の場がオンライン上であるため、日本語教員・学習者双方がその授業環境に慣れた上で実施すべきだと考えている。また、オンライン上で実施するための準備と再検討が課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、年度末である3月に全米日本語教育学会の年次大会に参加する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大予防のため、現地ボストンでの開催は中止となったため、繰越金が生じた。 令和元年度の繰越金は、令和2年度で実施する本調査および評価活動に協力してくださる日本語教員と学習者の謝金・謝礼に用いる。
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備考 |
第32回日本語教育連絡会議(会場:ウィーン大学)において、「同僚教員・学習者との評価者間信頼性を目指したルーブリック活用の実践報告」と題し、口頭発表を行った。 日本語教育学会が受託した文化庁委託事業(2018-2020年度)「人材、知財、ネットワークを活かした中堅日本語教師のための研修(略称:JCN研修)」において、「ルーブリックでつなぐ・つながる作文評価」と題し、口頭発表やポスター発表を行った。
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