研究課題/領域番号 |
19K13251
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
川上 ゆか 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (00778805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共通言語としての日本語 / 複接触場面 / マルチモーダル分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、共通言語としての日本語を使用した日本人同士の内的場面、日本人と留学生との接触場面と留学生同士の第三者言語場面が複雑に共存する「複」接触場面を言語・非言語両面から通時的にマルチモーダルに分析し、ことばや文化を超えた参与者間の関係構築のプロセスとその変化を可視化し、関係構築プロセスにおける相互行為の包括的な解明を目指している。また、その成果をグループ活動の学習環境デザイン構築や多文化共生社会での相互理解教育への提案を最終目的としている。 2020年度は、前年度に収集した多人数会話データの整備と分析を行った。分析データは国際学生寮での日本人学生2名と外国人留学生3~4名が行う日常会話で、前・後期各9回、通時的にビデオカメラとICレコーダーで収集したものである。また、各学期とも20分程度、個別に事後インタビューを行った。 1.データの整備:計18回の日常会話データと研究協力者11名の事後インタビューデータの転記・文字化と非言語行動のアノテーションを行った。 2.データの分析:2019年度前期に収集したデータにみられる聞き取りや理解に問題があった場合にみられる聞き返しなどの発話修復デザインにかかわる分析を行った。先行発話の聞き取りや理解に問題があった際、聞き返し(他者開始修復)が行われるが、第三者言語場面では最初の聞き返しで理解に至らない場合、日本人学生にその説明を求める行動がしばしば観察された。また、意見や考え方に相違がみられた際には、聞き返しをくりかえすものの結局相互理解に至らない場合がしばしばあった。その際は最初に異議を申し立てた者が評価コメント(初めて聞いた・面白いね等)をすることでその話題を終了していることが観察された。インタビューデータの分析からは、今回の研究協力が協力者同士の関係性の変化の一つのきっかけとなったと考えられる語りが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度に研究代表者が勤務校を異動したことと、所属校のオンライン対応などによる校務が多忙となったことにより、 1.予定していた国際共修クラス内でのグループ活動データの収集が不可能となった 2.2019年度に収集したデータの転記・アノテーションなどの整備作業と分析が遅れている ことにより、当初の計画通りに進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に収集した国際学生寮での日常会話データおよび事後インタビューの発話部分の転記・文字化の作業は概ね終了したため、今後は視線やジェスチャーなどの非言語行動の詳細な転記・アノテーション作業を順次行うと同時に会話の連鎖構造の分析を進める。また、2019年度および2020年度に収集予定であった国際共修クラス内でのグループ活動データについては、今年度内に調整・収集が可能となれば、分析対象データとして収集を行う予定である。 収集した分析データが多人数会話であるため、2つ以上の別の内容の会話や活動が複雑に絡み合いながら同時に進行している場面が多い。それら別々の会話がどのように始まり、(同時)進行し、最終的に終わる(あるいは一つに戻る)のかについての分析を今後進めていきたい。 事後インタビューデータの語りとそれに関連する実際のデータ部分の観察から、研究協力者の関係性の変化において飲食活動が重要な役割を担っているという分析の手がかりを得た。そのため、上記同時進行の会話内容とも関連させ、詳細な観察および分析を行いたい。 2020年度に報告予定であった、聞き取りや理解に問題がある場面の発話の修復構造にかかわる分析内容、また事後インタビューの語りからみられた研究協力者の関係の経時変化については2021年度に延期された所属学会で報告する。同時に進行する複数の会話の構造、飲食活動と関係構築との関連にかかわる観察・分析結果については、順次国内外の学会等で報告・発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に出張を予定していた国内外の学会が延期、あるいはオンライン開催となったため、次年度使用額が生じた。 2021年度には、グループ活動が収集できる小型のアクションカメラ、動画・音声データの整理・編集および分析が問題なく行えるスペックの高いノートパソコン、成果公表の際に必要な動画データの加工をするための動画編集ソフトの購入を計画している。
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