研究課題/領域番号 |
19K13251
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
川上 ゆか 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (00778805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共通言語としての日本語 / 複接触場面 / マルチモーダル分析 / 相互理解 |
研究実績の概要 |
本研究は、多様な文化背景の学生が行う日本語会話を通時的に録画し、言語・非言語両面から分析することで、学生間の関係性の変化とそのプロセスを可視化することを目的としている。また、その成果をもとに、教育実践で利用可能な教材の開発や学習環境デザインの構築を目指している。 2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大のため、予定していた協働活動データの収集が不可能であった。そのため、2019年度に国際学生寮で収集した多人数会話データと個別に行った事後インタビューデータの見直し整備と分析を行った。具体的には、①データ収集協力者の事後インタビューを対象に、関係性の変化と相互理解にかかわる語りの整理と分析をし、②インタビューにみられた関係変化のきっかけに言及した語りをもとに、該当する会話データ部分を観察、記述し、検証を行った。また、③会話の中で意見や考えに食い違いがみられた際の発話修復の分析を行った。①については、関係性の親密化と相互理解の深まりが示唆されたが、相互の違いを知るだけで十分で、相互理解は必要ないという語りがあり、協働活動や実践研究を進めるうえでの示唆を得た。②については、変化のきっかけが、データ収集初回のからかい発話と一時的な対立であることが示唆された。③に関しては、意見や考えに相違があった場合、聞き返しによる説明要求がなされ、複数の順番で交渉が行われるが、合意に至らず、最初に説明要求した者が評価を表明する発話で修復の連鎖を完了していることが観察された。 データ収集協力者は、ともに研究協力をすることにより、関係性はより親密になり、相互理解も深まったことがうかがえた。一方で、それぞれが異なる個であることを重要視する語りがみられたことから、相互理解を考察するうえで新たな視点を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、本務が多忙となり、研究に割けるエフォート率が下がったこと、また、計画していたデータ収集が実施延期となったことで、当初の計画通りに研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長し、2021年度に実施ができなかった協働活動データの収集を予定している。授業形態の急な変更などにより、協働活動データの収集が困難な場合は、調査方法をインタビューやアンケートに変更するなどの対策を講じる。 2019年度に収集したインタビューデータの分析から、データ収集協力者間の関係性変化のきっかけが会話中の飲食行動やその嗜好に関わる話題にあることが示唆されたため、会話データの見直し整備を行い、関連する場面の記述と分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に出張を予定していた国内外の学会がすべてオンライン開催となり、出張の必要がなかったため、次年度使用額が生じた。 2022年度には、協働活動場面のデータ収集が可能な小型のアクションカメラ、動画データ保存用のハードディスクなどの機器、データ分析に利用可能なソフトウエアの購入を計画している。また、協働活動データ収集後に音声データの文字起こし作業の業務委託を計画している。
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