本研究は、共通言語としての日本語を使用した日本人学生と外国人留学生の多人数会話場面を通時的に録画し、言語・非言語両面から分析し、関係性の変化とそのプロセスを可視化することを目的としている。また、その成果をもとに、教育実践で利用可能な教材の開発や学習環境デザインの構築を目指している。 2019年度に収集した国際学生寮での日常会話データでは、会話中に食べている「お菓子」をめぐり、嗜好の違いへの気づきやそれに対する意見の齟齬を起点に相互理解が深まる様子が伺えた。2020年度以降にさらにデータ収集をする予定であったが、新型コロナ感染拡大の影響を受け、お菓子を囲んだ会話データの追加収集が困難となったため、収集データの見直しを行った。対面での活動が可能になり次第、共通言語としての日本語を使った授業内協働活動データの収集とその分析をすることにした。2021年度は、オンラインとハイブリッドでの協働活動であったため、活動のデータ収集は行わず、事前・事後インタビューのみを行った。 2022年度は、①グループ活動の録画とその参加者に対して事後インタビューを行い、そのデータの整備と、②前年度に収集したインタビューの分析を行った。①は、日本人学生と外国人留学生が協働で立案企画し、活動内容を決定するまでの話し合い場面を4回(各30~60分程度、3グループ)録画した。また、学期末に任意で個別に活動に関するインタビュー(各20分程度)を行い、動画と音声データの文字起こしと整備を行った。②では、未入国の学生がいたため、オンライン・ハイブリッドと活動形態が変遷する中、置かれた状況でできることを探り、役割分担をし、工夫していくうちに相互の関係性が変化し、相互理解が深まっていること、また、活動の場が未入国留学生にとって居場所(拠り所)となっていたことが伺えた。
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