最終年度にあたる2023年度は、新規のインタビュー調査は実施せず、過去の調査対象者へのフォローアップインタビューと、文献調査を含むこれまでの研究成果の取りまとめを中心に行った。そして、その成果を基に計3回の学会発表を行った。また、調査結果や発表を基に学術論文を作成し、学会誌への論文投稿を行った結果、そのうちの一部が採択となった。 本研究は当初3年の研究期間を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、2年間の延長を行った。しかし、国内外の移動や対面での調査実施が困難な期間が長く、オンラインでの調査・成果発表を余儀なくされることが多々あった。当初予定していた30名の調査は叶わなかったが、最終的には延べ20名を超える元留学生を対象にインタビューを実施することができた。その結果として明らかになったことは、学部留学を経て国内就職を実現した外国人留学生の多くが、キャリアのトランジション(転機)を経験していたということである。留学生の経験するトランジションの多くは、学内外での多様なコミュニティ参加や、その過程に生じる人間関係の構築に関わるものが多く、また、トランジションの過程で生じる葛藤や困難を乗り越えた経験が、自身の全人的成長として実感されていた。そして、そうしたトランジションの経験と全人的成長の実感が、大学卒業後の「日本での就職」という選択を後押しし、また、実現の支えとなっていることを示した。
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