研究課題/領域番号 |
19K13254
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
溝口 愛 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (10824823)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 調音 / 撥音 / 超音波 / 日本語 |
研究実績の概要 |
研究3年目である令和3(2021)年度においては、前年度同様コロナ禍で被験者を集めた実験を行うことが困難であったため、すでに収集済みの超音波実験データを用いて分析を進めた。 日本語母語話者の撥音「ん」の調音について、超音波診断装置を用いた舌運動データの解析を行い、調音点を明らかにした。舌位置の解析には、超音波画像撮影時の頭部の位置変化を補正するためのモーションキャプチャーシステムが用いられ、HOCUS (Haskins Optically Corrected Ultrasound System)によるデータ収集後のデジタル補正が実施された。これにより、精度の高い調音位置の測定が可能となった。分析の結果、調音点には個人差があり、歯茎から口蓋垂にかけて分布することが分かった。具体的には、舌運動データを収集した8名の話者のうち、5名が口蓋垂または軟口蓋周辺の口腔後部で、1名が歯茎部で調音していた。また、2名は、先行母音である「あ」の舌形状との違いが見られず、これらの話者については、明確な調音点が意識されていない可能性が明らかとなった。ただし、「ん」の舌位置を、発話状態ではない舌位置と比較すると、全ての話者において違いが見られたことから、全話者が「ん」に対してなんらかの調音ターゲットを持つことが示唆された。また、先行母音が「う」の場合に、先行母音が「あ」の場合より調音点が高くなる傾向が見られ、先行母音による「ん」の調音への影響が確認された。 これらの結果について、日本音韻論学会で発表を行い、論文は学会誌「音韻研究」に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しく被験者を集めた実験はできなかったが、すでに収集済みのデータを用いた分析により、比較対象となる日本語母語話者の分析については、成果の発表まで行えた。1年間の延長を行ったので、データ収集については、次年度実施する。
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今後の研究の推進方策 |
日本語学習者の調音データを超音波診断装置を用いて収集する。結果は、2023年に開催される国際学会International Congress of Phonetic Sciences (ICPhS)に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンラインで行われたため旅費がかからなかった。コロナ禍により被験者を集めた実験ができず、謝金の支払いがなかった。次年度は、実験を実施する。謝金以外にも、実験の設備(コンピューター、ハードディスク等)にも使用する予定。
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