研究課題/領域番号 |
19K13254
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
溝口 愛 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (10824823)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 第二言語習得 / 調音 / 発音 / 日本語 / 超音波 / 鼻音 |
研究実績の概要 |
研究4年目である令和4(2022)年度には、前年度まで実施できていなかった対面での実験を行った。対象を中国語母語話者に広げ、中国語母語話者6名、日本語母語話者3名の中国語、日本語、英語による発話を録音し、同時に超音波診断装置を用いて、調音データを取得した。 中国語母語話者による中国語鼻子音 /n/、/ng/、および日本語「ん」発話時の舌形状を観察、分析を行った。その結果、日本語習得レベルに関わらず、「ん」を中国語の/n/と同様の舌位置で代用している話者が見られた。この結果は、英語母語話者の日本語「ん」の発話と同じ傾向を示している。日本語母語話者では、「ん」は奥舌を用いた口蓋垂音で実現されることが多いが、口蓋垂鼻音は英語にも中国語にも存在せず、未知の調音位置を避けるために、母国語に存在する別の鼻音、この場合は歯茎音 /n/、で代用するというストラテジーが、中国語と英語で共通していることを示唆する。一方で、英語母語話者では、奥舌を用いた「ん」の発話を行った話者が見られなかったのに対し、中国語母語者では、奥舌を用いた発話を行った話者もいた。英語話者、中国語話者いずれも被験者数が少ないため結論は出せないが、奥舌による調音が習得可能であることを明らかにする例である。 以上の結果をまとめた論文を、国際学会International Congress of Phonetic Sciences (ICPhS) 2023に投稿し、採択された。 また、以前収集した日本語母語話者の鼻音についての分析も進めており、鼻音の音響的・調音的特徴についてまとめた内容を国際会議Hanyang International Symposium on Phonetics and Cognitive Sciences of Language (HISPhonCog)2023で発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しく被験者を集めた実験を行うことができた。分析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実験で収集したデータの分析をさらに進め、日本語母語話者データとの比較を行い、最終年度となる2023年度中の論文投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での学会参加ができなかったため次年度使用額が生じた。次年度、チェコで開催されるInternational Congress of Phonetic Sciences (ICPhS) 2023 の旅費として使用予定。
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