研究実績の概要 |
3年間の研究計画の2年目である。本年度の主な研究実績は以下の2点である。 <2018,2019年度調査結果の複合的分析と結果の公表> 2018年度,2019年度末に実施した調査を複合的に分析し,結果を公表した。これらの調査においては児童の文法知識の発達を「はじめは丸ごと記憶して使用している表現のうち一部が入れ替え可能であることに気づくプロセス」と定義し,(a) I want [A]., I want to [B]., I want to be [C].の使い分け,(b) What [D] do [E] [F]?の2種類の表現を調査対象とした。公立小学校の5, 6年生を対象に文法性判断課題,空所補充課題,メタ言語知識課題を実施した。両方の調査に参加した76名の児童の,空所[A~C]に関するデータを主な分析対象とし,1年間の学習を通した児童の知識の伸びについて検討した。結果は概略以下の通りである。①児童の文法知識は小学6年生の1年間で伸長した。②空所の位置によって知識の習得度は異なる。③暗示的知識や手続き的知識を身につけている児童はメタ言語的知識を身につけている場合もあるが,規則の説明に文法用語はほとんど用いられていなかった。 <2020年度調査の実施> 2021年3月に,2019年度調査の協力校で調査を実施した。調査対象は2020年度の5, 6年生であり,調査内容は2018, 2019年度調査と同一のものであった。本調査の目的は次の2点である。①2018, 2019年度調査の比較から得られた傾向は,2019, 2020年度調査の比較においても再現されるか。②高学年の教科化により,児童の文法知識は質的に変化するか。これらの点について2021年度に分析を行い,結果を公表する予定である。なお,感染症の流行を受けて調査の実施は協力校の教員に依頼した。
|