研究課題/領域番号 |
19K13280
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
董 玉テイ 福岡大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60807030)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 初修中国語教科書 / 単母音 / 有気音・無気音 / 指導順序 / 練習間隔 |
研究実績の概要 |
2019年度においては、まず、より効果的に本研究を実施するために、初修中国語教科書における単母音と有気音・無気音の問題点を特定するため調査を行った。そこで、単母音の場合には、①不適切な記述で日本語の母音を意識させるものが多い、②舌の前後位置がほとんど強調されていない、③調音方法を記述していない教科書が存在する、などが挙げられる。一方で、有気音・無気音の場合には、①日本語子音の調音方法を代用する表現が多い、②有気と無気の区別について言及していないものが多い、③調音方法を全く記述していない教科書が多い、といった問題点がみられた。そこで、筆者による既存の研究成果に基づき、以上の問題点を効果的に解決できると考えられる調音方法を提案し、「中国語教科書における単母音と有気音・無気音の調音方法の問題点について」という論文にまとめ、『福岡大学人文論叢』第51巻第1号に発表した。 次に、中国語の単母音と無気音・有気音の有効な指導順序に関する研究を行った。具体的には、難しいと考えられる発音と難しくないと考えられる発音を、2つのクラスで異なる順序で指導し、学習効果を検証した。クラスAでは、比較的に難しくないと考えられる単母音と無気音を先に教えた。一方で、クラスBでは、相対的に難しいと考えられる単母音と有気音を先に教えた上で、テストを実施した。今後は、テストの結果をまとめ、それに対して統計処理を行い、クラスAとクラスBとの間には有意差の有無を検証し、より効果的な指導順序を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、本研究は初修中国語教科書における単母音と有気音・無気音の問題点を特定し、有効に解決できると考えられる指導方法を提案したことは、本研究の順調な進展に寄与するほか、中国語発音教育研究全体に対する波及効果も期待される。 次に、従来の研究のほとんどは、学習者の自然習得過程における問題点の特定を扱ったものであり、学習効果を向上させるため、先に難しくない発音と困難な発音のどちらから教えたほうが効果的であるか、実際に検証したものは見られない。近年、第二言語習得研究において最適な文法指導順序や練習間隔を調査した研究が現れているが(Suzuki2017, 許・鈴木・劉2018など)、管見の限り、中国語の音声に関する習得研究においては、指導順序といったの新たな視点からアプローチしたものは国内外問わず見られない。そこで、中国語の単母音と無気音・有気音の有効な指導順序に関する研究を行い、効果的な教授法を提案することにより、日本語母語話者のための良質な教材の開発と実用的なカリキュラムの実現が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では、2019年度に実施した調査の結果に対し統計処理を行い、二つのグループの間に有意差があるかどうか検証する。同時に、より効果的な指導順序を明らかにする予定である。なお、日本の大学では、週2回の中国語の授業は2人の教員が分担することが多く、指導順序を入れ替える際には、ペアの教員の理解と協力を得ることは必要不可欠である。この研究の結果を論文としてまとめ、2020年度内に発表する予定である。 同時に、2020年度では、中国語の接近音/r/と/l/と鼻音/n/と/ng/の練習間隔に関する実験を実施する。具体的には、同じ練習回数でインプットした場合には、3-4日空けて行う場合(集中学習)と週1回で行う場合(分散学習)、どちらのほうが学習効果が促進されるかを検証するためのテストを行う。研究期間内において応用言語学、第二言語習得研究分野の専門家から意見を求める予定もある。
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