日本語母語話者に対する中国語発音指導に関するほとんどの研究は、学習者の自然習得過程における問題点の特定を扱ったものであり、学習効果を向上させるために繰り返し練習する間隔をどの程度空けたほうが効果的なのか、言い換えれば、分散学習と集中学習のどちらがより学習効果を促進するかに関する検証は注目されず行われていない。このため、筆者は練習の間隔という観点から実験を行った。具体的には、中国語を学習する日本語話者のそり舌摩擦音rと歯茎側面接近音l、歯茎鼻音nと軟口蓋鼻音ngの習得について調査した。 本研究の実験は、某大学で中国語を学習する2つのクラスの学生を対象に実施された。学習項目はrとlのペア、nとngのペアであり、これに関する4回の学習内容は全く同質であり、学習し始めて約2ヶ月の間において行われた。一つのクラスは集中学習グループで、3日または4日の間隔で繰り返し学習した。もう一つのクラスは分散学習グループで、7日の間隔で学習を繰り返した。テストは、両群それぞれの4回目の学習が終了して一週間が経過したときに行われた。テストの正解率を見ると、平均点はおおよそ80%以上と、比較的に高い結果が得られた。特にngについては、両群はともに90%以上であった。一方で有意差は、rとnの2項目において認められ、ともに集中学習グループのほうが有意に高かった。本研究の実験結果に限定して言えば、類似音のペアを学習する際には、1週間程度空けるより、3日または4日程度空けて練習を行ったほうが、学習効果が促進されるという結果が推定された。しかし、語彙習得の時に記憶の保持を促進したと考えられる分散効果は、この研究では確認されておらず、本研究の結果は、むしろSuzuki(2017)による文法習得に見られる3日または4日程度空ける方が効果的という結果に類似していると考えられる。
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