研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、英語の授業を英語で行う際の効果的な手法を模索し、その有効性を実証研究によって検証した。 まず、効果的な英語による英語の授業とはどのようなものかを議論した。これまでの研究によると、多くの英語教員は指示や褒め言葉、またQ&Aなどの場面ではよく英語を使用するものの、教材の理解を促すために英語を用いている割合は低いことが明らかになっている。そこで、より充実した英語による英語の授業を目指すためには、教師が英語を使用する際、あいさつや指示などの定型表現ばかりではなく、新出の言語材料(語彙や文法等)を英語で理解させてこそ、生徒の英語理解力向上に貢献するのではないかと論じた。それを実現するためには、質問を多用することや、場面や状況の中で生き生きと言語材料の意味を描写することがポイントとなる。 そして具体的な手法として、Eliciting the target items(指導項目を引き出す)、Checking understanding by questions(質問をして理解を確認する)、Conveying/illustrating meaning(意味を伝える/描写する)の3つのテクニックを用いて英単語の意味を教えた。 実証研究では、6つの単語(appropriate, vehicle, abuse, symptom, vary, rough)を、前述のテクニックを活用して高校2年生のクラスで指導した。事前にティーチャートークの原稿を考えた上で指導を行った。その結果として、特にsymptom, abuse, vary, vehicleについては、事前にこれらの単語を知らなかった学習者もよく理解できていたのに対し、appropriateとroughは、学習者が比較的意味を捉えにくいことが分かった。効果的に英語を用いて言語材料を指導する際は、その単語の意味領域をよく分析した上でティーチャートークの内容を考えておくことが不可欠であることが示唆された。
|