研究課題/領域番号 |
19K13288
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山田 敏幸 群馬大学, 共同教育学部, 講師 (50756103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 外国語教育 / 第二言語学習者 / 文法的誤り / 人間言語の生得性 / 理論と実践の往還 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第二言語学習者の文法的誤りが、一切インプットを受けたことがない言語で文法的に容認される構造であるかを分析することで、第二言語学習者の文法的誤りをとおして人間言語の生得性を実証できるかどうかを明らかにすることである。また、第二言語学習者の文法的誤りを収集・分析することで、学習者がつまずきやすい文法項目の分布と傾向を同定し、英語教育や日本語教育などの外国語教育に貢献することである。 2022年度の成果は以下のとおりである。 ①まず、先行研究に基づき、今後追究されるべき研究仮説「言語学習者の文法的誤りは第一言語であれ,第二言語であれ,生得的に規定された範囲(媒介変数)内に収まっている」を構築することができ、日本人英語学習者と日本語学習者をケーススタディとして予測検証をすることができた。 ②次に、自由英作文の手法をとおして、日本人英語学習者から3133個の文法的誤りを収集し、誤り分析により36種類の形態統語項目の誤りを同定し、主な文法的誤りとして冠詞の誤りを996個(30.06%)、名詞句内数一致の誤りを437(13.19%)、前置詞の誤りを402個(12.13%)を発見し、日本人英語学習者がつまずきやすい文法項目を明らかにできた。 ③最後に、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、特に日本語学習者から直接データ収集することが難しい判明したため、その代替案としてコーパス資料に基づいてデータを収集する手法を確立させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、5つの事項について以下の方法で実施する計画である。(A)まず、日本人英語学習者の文法的誤りを収集する。(B)次に、収集した文法的誤りを含む非文を実験的に検討する。具体的には、データとしての信頼性を高めるために、各非文の容認可能度を質問紙や反応時間測定(自己ペース読文課題など)の実験を実施して数値化する。(C)次に、収集した文法的誤りを分析する。(D)次に、日本人英語学習者がつまずきやすい文法項目を同定する。(E)最後に、上記(A)~(D)を応用して、分析対象を日本語学習者に拡張する。 2022年度は上記のうち、(A)、(C)、(D)、(E)の4項目を進展させることができた。昨年度同様、当初予期していなかった新型コロナウイルス感染症問題のため、(B)に係る行動実験が遂行できなかった。だが、今後追究されるべき研究仮説を明確にすることができ、また当初想定していなかった各種コーパスにより、日本人英語学習者と日本語学習者の文法的誤りを収集する手法を確立することができた。結果として、コーパスデータにより、予測の検証ができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】でも述べたが、2022年度も昨年度同様、新型コロナウイルス感染症という当初予期していなかった問題のため、計画していた行動実験を実施することが困難であった。そのため、本研究が実施する予定の5つの事項について、(B)「収集した文法的誤りを含む非文を実験的に検討する」は可能な状況になってから実施する予定だが、難しい場合には各種コーパスによる資料収集の手法によって、分析すべき日本人英語学習者と日本語学習者の文法的誤りのデータを収集し分析する。行動実験だけでなく、資料分析をとおして研究の目的が完遂するように、残りの4つの事項(A)「日本人英語学習者の文法的誤りを収集する」、(C)「収集した文法的誤りを分析する」、(D)「日本人英語学習者がつまずきやすい文法項目を同定する」、(E)「上記(A)~(D)を応用して、分析対象を日本語学習者に拡張する」に取り組む。具体的には、日本人英語学習者と日本語学習者のコーパスデータを収集・分析することで、研究仮説から導かれる予測の検証をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症を事由として、「補助事業期間延長承認申請書」をもって期間延長を申請し、延長後の年度に予算を効果的に活用するために次年度使用額が生じた。 少額ではあるが、次年度は主に研究成果を総括する年度となるため、発表資料や論文の作成に対する記録媒体などの購入に使用する。
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