研究課題/領域番号 |
19K13298
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 恵利子 広島大学, 森戸国際高等教育学院, 特任准教授 (30710868)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本語 / 発音 / 特殊拍 / HVPT |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語学習者の音声の知覚習得を支援するHVPTという指導方法の日本語への応用と有効性の検証を目的としている。複数の話者による音声を用いて知覚訓練(HVPT)を行うと、知覚能力が向上すると言われており、海外の先行研究は、第2言語学習者の子音や母音の知覚を調査対象としている。本研究はそれを応用して、特殊拍(ん/っ/ー)の弁別力向上への有効性を検証しようとしている。 昨年度は1984年に国立国語研究所がまとめた「日本語教育基本語彙 五十音順表」に拍数、アクセント型、特殊拍の種類などの情報を加え、本調査用のデータベースを作成した。これにより、刺激語選定の際、特殊拍の位置とアクセント型および語の長さを統制することが容易になった。その上で、調査に使用する刺激語の候補となる語をリストアップ、読み上げ音声の録音、刺激音声の編集という作業を行った。しかしながら、コロナ禍において調査および指導対象となる留学生の来日が止まり、来日できても対面でのやりとりができない、継続的に参加できる被験者数が確保できないという状況が続き、実装には至らなかった。また、着任直後、通常業務(授業)のオンライン化への対応など時間を割かれ、研究に充てる時間を十分に確保することが困難であった。学会も延期や中止が相次ぎ、なかなか予定が立てられなかった。以上のような状態で、はかばかしい進展は得られていない。先行研究のフォローとアップデートは継続して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、日本語学習者の発音習得を支援するために、HVPTという指導方法の有効性を検証することを目的としている。海外ではHVPTに関する研究実践報告も増えており、先行研究をフォローしている状況である。しかしながら、コロナ禍において調査対象となる留学生の来日が止まり、また来日できても対面でのやりとりができないという状況が続いたため、残念ながら研究の進展は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
オンライン授業の中で学生とやりとりするが、スピーカー越しでは音を正確に捉えることが困難である。話し始めの若干の時間差で発話の重複を生じることもある。通常なら訂正すべき場面でも、意味を確認するだけで、誤りを指摘せず先に進めてしまうことが多くなった。オンラインでの発音指導は対面時以上に困難であると感じた。 今後も引き続き、海外との往来が困難な状況が続くことが予想される。訓練データを取ることはおそらく困難であろう。ただ、海外で発表されている研究成果を文献研究としてまとめ、日本語教育への応用に向けた具体案を再検討することは、この状況でも可能であろう。また、発音の対面指導データではなく、遠隔トレーニング(自学自習)を前提に、研究計画や指導実施を見直すことも必要であると考える。その場合、十分な統制ができないためデータの質が低下することは否めないが、実践報告という形での成果発表も選択肢の一つとして考えたい。幸い、現勤務校ではLMSの使用が認められており、オンライントレーニングシステムの構築が可能である。遠隔地での被験者の確保など、困難な問題はあるが、可能なところから着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査が実施できなかったため、調査協力者への謝金として計上していた金額が使用されなかった。また、国内外の学会が中止またはオンライン化されたため、出張旅費が使用されなかった。同じような状況が継続することが予想されるが、書籍・消耗品の購入、オンライン学会参加費、実施可能であれば調査協力者への謝金に充てたい。
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