研究課題/領域番号 |
19K13323
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武藤 三代平 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (50804621)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 植民思想 / 殖民協会 / 榎本武揚 / 自由党 / 国是論 / 移民 |
研究実績の概要 |
明治中後期の植民政策・植民事業をめぐる動向は、主に海外植民の奨励活動を主導したとされる榎本武揚と殖民協会(1893年設立)の活動を中心に研究が蓄積されてきた。しかし、政党勢力の植民をめぐる政治活動に関しては、本格的な研究がなく、その全体像が明らかになっていない状況であった。したがって、研究開始の初年にあたる本年度は、自由党の動向を調査の主軸とし、植民政策や植民事業にいかなる形で関与したのかについての基礎的な情報を収集したうえで、榎本との協同関係に至った過程を検討した。具体的には、基礎資料といえる殖民協会の機関誌『殖民協会報告(殖民時報)』をはじめ、自由党の機関誌等から植民事業に関する活動記録を収集した。また、国立国会図書館憲政資料室所蔵の個人文書等の調査に従事し、当該期における政党員の一次史料の収集に努めた。しかしながら、量も多いため、こうした基礎情報の収集は、次年度以降も継続していきたいと考える。 本年度の成果として、論考は次年度以降の公表となるが、植民活動の全体像を俯瞰する意味で、「植民思想と移民」(日本思想史事典編集委員会編『日本思想史事典』丸善出版、2020年)が公表された。自由党を主力とする政党と、政府側の榎本が明治中期の植民政策を「国是」の観点から遂行し、協同関係を築いていた様相を展望することができた。今後、明治政治史研究の蓄積を前提とし、初期議会期の自由党が標榜した「積極主義」の視点から、植民政策・植民事業の奨励を考究していく一助になるものと考える。また、海外植民に対置させるかたちで、開拓使を焦点に据えた北海道開拓に関する研究報告を行うことができた。明治期の植民政策を分析するうえで、その原型を再考する機会となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的な史料の収集に関しては、おおむね順調に進展しており、データベース等の作成に従事することで、時系列的に本課題への理解を深めている。また、事典の一項を担当し、研究課題の方向性を改めて確認し、研究報告等も行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、第一に本年度に行った調査をもとに論文化に注力する。第二に、自由党以外の政党勢力(立憲改進党など)に焦点をあて、その植民活動と植民政策を考究する。第三に、明治期の青年(壮士)を対象に、彼らの植民活動と中央の政治動向との関係性を探っていく。第四に、明治中期における植民論(植民思想)を再検討し、海外植民論と北海道移民論との相違点(分岐点)を、中央の政治動向から分析したいと考える。史料面に関しては、本年度に引き続き、明治期の移植民に関する基礎情報の調査を徹底していきたい。 とはいえ、今後は新型コロナウイルスの感染拡大の影響が懸念されるため、当初の計画に沿った史料調査を行うことができるとは限らず、予定の変更を余儀なくされることが予想される。出来る限り、防疫意識を高め、臨機に対応していくことを心掛けたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年2月から3月までの期間にまとまった支出を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、学会の開催が中止となり、資料館・図書館等の利用が制限されたため、計画の変更を余儀なくされた。 そのため、次年度の史料調査の回数を増やすなどし、本年度分の使用額を支出していく予定である。
|