本研究では、当初の計画通り非領国地域の出羽国村山郡に所在した佐倉藩堀田家の飛地領(46ヵ村、約4.1万石)を分析対象としてきた。飛地領内の史料を把握・調査する段階から着手し、それら史料の分析を通じて、近世後期の飛地領における地域運営と、堀田家による支配の実相を究明することを目指した。コロナウイルスの感染拡大により予定していた調査を実施することができなかったこと、他方2021年度中に新たな文書群の調査に着手したことから、補助事業期間の延長を申請し、2022年度を最終年度として研究課題に取り組んだ。 同年度においては、山形大学附属博物館で調査を行って飛地領関係史料の撮影を進めた。さらに、従来から取り組んでいる個人所蔵史料(遠藤家文書)の調査も実施して撮影を行い、目録を作成するうえで必要な画像を収集した。撮影画像を利用し、同文書の目録作成を完了させた。調査成果の公表については、まず飛地領における調査内容を紹介した原稿が一般向け書籍に掲載された(「山形市内での史料調査から大名飛地領に迫る」東北大学東北アジア研究センター編『東北アジアの自然と文化2』東北大学出版会、2023年1月)。飛地領の研究を補充するために取り組んだ堀田家家臣団の研究については、口頭報告として発表することができた(「天保~元治期の佐倉藩堀田家における家臣団編成改変への模索」千葉歴史学会近世史部会2月例会、2023年2月)。 研究期間全体を通じ、当該地域に伝存する史料の調査を推進するとともに、その成果を研究目的に沿いながら口頭報告、史料紹介原稿、研究ノート、論文などのかたちで発表することができた。
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