本研究の目的は、中世後期の足利一門大名・守護について、基礎的な研究を進めることにある。今年度はその最終年度であった。そこで得られた成果は以下の通り。なお、全体を通じ、新型コロナウイルス感染症が研究期間に直撃したものの、総じて、総論・各論ともに日本中世史研究・中世後期足利一門大名・守護研究を前進させることができたと考えている。同時に、日本中世史以外の研究者と交流を深化させることができたのも大きな成果と思量する。
第一に、全体に関わるものとして①単著『足利将軍と御三家』(吉川弘文館)、②「足利御三家の足跡を探して」(『本郷』163号)を上梓し、③「柳田国男の「都鄙雅俗」論をめぐって」(国際日本文化研究センター)、④「日本中世史研究の潮流と青学史学」(史学科フォーラム)を報告した。①は吉良・石橋・渋川氏の足利御三家(室町時代の御三家)について論じたもの。②はその補論で、近世以降に残る足利伝承を追ったもの。③は民俗学との共同研究で、柳田国男が日本文化の重要な核の一つと喝破した「都鄙雅俗」の概念につき、柳田の主張とその受容をめぐる研究史を整理したもの。④は日本史・東洋史・西洋史・考古学との共同研究で、日本中世史研究の現状と課題を報告し、各分野との対話を行ったものである。
第二に、個別に関わるものとして①「足利政氏の妻と子女」(『足利成氏・政氏』戎光祥出版)、②「足利高基の妻と子女」(『足利高基・晴氏』戎光祥出版)、③「遠州飯尾氏は「両属」国衆か」(『静岡県地域史研究』12号別冊)を執筆した。①②は関東足利政氏・高基関係の基礎的研究。③は2017年に刊行したものの再録。他に、書評類として「書評 小久保嘉紀著『室町・戦国期儀礼秩序の研究』」(『年報中世史研究』47号)、「書評 市村高男著『足利成氏の生涯』」(『週刊読書人』3464号)を認めた。
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