研究課題/領域番号 |
19K13334
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長谷川 裕峰 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (60802361)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 阿弥陀房抄 / 宝地房証真 / 法華大会 |
研究実績の概要 |
本研究課題では主な考察対象として、(ⅰ)『阿弥陀房抄』と(ⅱ)『天海蔵義科抄』という2種類の天台論義書を取り上げたが、両者とも膨大な未翻刻史料群であったため段階的に博捜・撮影・翻刻・比較検討を進めた。 ・(ⅰ)に関しては、かなり具体的な研究成果をあげることが出来た。平成29・30年度科研費(研究活動スタート支援・研究代表者長谷川裕峰・研究課題名「『阿弥陀房抄』および延暦寺論義書の基礎研究―学僧ネットワークの系譜―」)で明らかとなった所蔵状況(拙稿「『阿弥陀房抄』覚書」(『坂本廣博博士喜寿記念論文集 佛教の心と文化』p.729~p.758、2019年)参照)に基づいて詳細に検討した結果、着目した「法身八相」という算題には二系統あることが判明した。その二系統を翻刻紹介したものが、「『阿弥陀房抄』法身八相(一)」(『叡山学院研究紀要』42、p.41~p.54、2020年)と「『阿弥陀房抄』法身八相(二)」(『叡山学院研究紀要』43、p.37~p.67、2021年)である。さらに、教学的背景については、「中世延暦寺の論義書にみる法身八相」(『天台学報』62、p.111~p.121、2020年)を上梓し、広く学界へ問いかけた。 ・(ⅱ)に関しては、その教学的分析を行う準備としてzoom会議システムを利用した検討会を数多く実施した。ここでは、『台宗論義二百題』の輪読を中心とした意見交換を行い、天台学の算題となる様々な論点を確認することが出来た。 以上、これらの翻刻成果・研究史整理を通して、当該期において法華大会に使用されたと考えられる天台論義書の一端を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『阿弥陀房抄』における「法身八相」の事例(拙稿「証真教学の継承をめぐる一試論―『阿弥陀房抄』法身八相を中心に―」(伝教大師一千二百年大遠忌記念論文集『平安・鎌倉の天台』、2022年発刊予定)参照)を踏まえれば、本未翻刻史料群には法華大会において実際に使用された論稿が数多く収録されていることが予想される。現在は、二系統の比較検討を進めることで、宝地房証真学派の教説がどの程度、当時の法華大会に反映されていたかという点を分析している。より一層の翻刻作業を行い、各学会等を通して広く学界へ問いかけることで、当該期における既存の教学上の問題点と法華大会における設問意図との関係性について意見交換をする事が可能な研究段階へと入ったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
『阿弥陀房抄』の中に「練習問題・想定問答」と「口頭試問の備忘録」という二系統の並存状況を解明した点が、昨年度の科研費研究における大きな成果の一つである。今後はこのような傾向が、他の算題において、どの程度敷衍できるかという点に注目しながら考察を進め、法華大会の教学的な実態解明に貢献したいと考える。
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