研究課題/領域番号 |
19K13335
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
加藤 明恵 神戸大学, 人文学研究科, 特命助教 (30824528)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 近世公家領 / 在郷町 / 在郷町運営 |
研究実績の概要 |
摂家による家領経営の実態について主に金融・財政的側面に着目して明らかにするという研究目的により、2021年度は、陽明文庫近衛文書(京都府立京都学・歴彩館デジタル資料および東京大学史料編纂所所蔵写真帳)の調査および近衛家掛屋亀屋次左衛門の「諸用留雑日記」(伊丹市立博物館所蔵)の分析を実施するとともに、前年度より引き続き小西新右衛門氏文書近世編(伊丹市立博物館寄託)・小西家萬歳蔵資料(小西酒造株式会社所蔵)の翻刻・分析を行った。また、既刊行史料集を用いて、伊丹周辺在郷町との比較検討も行った。 近衛文書については、近衛家による家領伊丹郷町への金銀貸付と近衛家内部での支出の状況が記された帳面である「禁秘抄」の調査を実施し、翻刻を終了した。小西新右衛門氏文書近世編については、伊丹郷町と近衛家・諸公家との金融に関する史料を中心に翻刻し、小西家萬歳蔵資料については伊丹郷町内の小物成銀の運用に関する史料を翻刻・分析した。「諸用留雑日記」については、亀屋次左衛門・近衛家による諸公家・京都町人との金銀貸借にかかわる関係が明らかになった。 以上の調査より、近衛家は近世後期に家領伊丹郷町に対して多くの貸付口座を設けて金銀を貸し付け利息収入を獲得しているが、各口座は諸公家・大名家を含む近衛家内外での支出入にも利用されており、近衛家が諸公家等に対し貸付を行う上で、伊丹郷町での金融が重要な位置を占めることがわかった。従来、公家による家領での金融や資金調達については事例研究があまり蓄積されておらず、本研究は新たな事例を提示するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響による史料所蔵機関の利用制限や、移転にともなう伊丹市立博物館の休館のために史料調査の停滞が一部あったたため、昨年度から持ち越している史料調査を含め、一部遅延している。しかし、すでに写真撮影済みの史料の翻刻・分析や刊行史料集を用いての調査を進めるなど、代替措置を講じて必要な史料調査を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年4月以降、各史料所蔵機関が利用可能になっており、遅延していた史料調査を積極的に進めていく。特に陽明文庫近衛文書については重要な調査対象史料も多いため、重点的に調査を実施し、調査の遅れを回復する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響により調査先の史料所蔵機関の利用が制限されたため、調査のための旅費の支出が大幅に減少し、次年度使用が生じた。2022年度は、史料所蔵機関の利用制限がない場合は可能な限り史料調査を実施するための旅費に宛てるとともに、刊行史料集等を利用できるよう図書を整備する。
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