本研究の目的は、日本近世公家領における領主支配の特質を、家領の地域社会運営の具体的な実態を通して明らかにすることである。摂家近衛家と家領の摂津国川辺郡伊丹郷町を対象として、主に両者間の金融活動の様相を近衛家・伊丹郷町の双方に伝来した史料を用いて検討した。 関係する寺社や公家等の利殖も目的とされた近衛家による伊丹郷町への貸付が、特に19世紀以降伊丹郷町において大規模に展開するが、この貸付が町運営を密接にかかわるとともに、近衛家においてはさまざまな支出に対応するための利殖として伊丹郷町への貸付が機能していることを明らかにした。
|