研究課題/領域番号 |
19K13336
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
東野 将伸 岡山大学, 社会文化科学研究科, 講師 (10812349)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本近世 / 地方都市 / 商品流通 / 金融 / 流通業者 / 商人 / 播磨国 / 摂津国 |
研究実績の概要 |
本研究は、近代移行期における西国日本(特に播磨国・摂津国)の地方都市や商人・流通業者についての史料を収集し、地方都市の内部構造と商人・流通業者の商品流通機能と金融機能の変容過程を明らかにすることを目的としている。具体的な作業としては、①播磨国西部(兵庫県西部)地域の有力農民・米穀商であった堀家(堀謙二家文書)の分析、②摂津国西部(兵庫県東部)の地方都市である御影村とその周辺の町・村にかかわる文書群(御影村文書等)の分析、加えて補助的な調査・分析として③備中国南部(岡山県南西部)の地方都市(倉敷等)における商人・流通業者の文書群(大橋家文書等)の分析等を行うことを計画していた。 このうち、本研究の1年目(平成31年度〈令和元年度〉)の課題は、A:播磨国西部(上記①)とB:摂津国西部(上記②)の史料調査を行い、収集した経営・地域経済関係文書の数量データを一定程度整理・分析することであった。Aについては、たつの市立龍野歴史文化資料館にて堀謙二家文書の史料調査を行い、同家の金融・商業関係帳簿のデータを整理して金融活動の内容や資産の推移を一定程度明らかにした。そして、この分析成果の一部を、岡山地方史研究会12月例会にて報告した。Bについては、神戸大学文学部古文書室において御影村文書等の調査・撮影を行い、主に地方都市の土地関係史料の収集と一定程度のデータ整理を進め、Aの成果とも合わせて、近世後期の地方都市の内部構造や商人の動向について分析を行った。その他、2年目以降、新たに分析対象とする史料を調査することも1年目の計画に含まれていたため、岡山県立記録資料館、大阪歴史博物館、伊丹市立博物館などの施設にて史料調査を行った。 なお、上記の研究の対象地域である近世後期~近代初期における西国日本にかんして、『民衆史研究』97号、『日本歴史』854号において、重要な先行研究に対する書評を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の1年目の課題のうち、(1)播磨国西部地域の史料調査と収集した経営・地域経済関係文書(特に堀家の金融・商業関係史料)の数量データの整理と分析については、新型コロナウィルスの流行を受けて、2020年3月に予定していた史料調査を中止したものの、一定程度の分析と一部の研究成果の公表を行うことができた。 (2)摂津国西部地域の史料調査と史料の数量データの整理については、特に御影村文書の土地関係史料の収集・データ整理・分析を進めることができており、(1)(2)ともにほぼ計画していた程度まで史料の収集・分析作業を進めることができている。 2年目には、1年目の成果をふまえつつ、(1)についての数量データの整理・分析をさらに進めることを予定している。また、1年目に史料所蔵施設での調査を行ったことにより、新しく分析に着手すべき史料の情報も一定程度入手でき、2年目以降の研究の準備も一定程度行うことができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の研究内容から引き続き、播磨国西部や摂津国西部を対象として、地方都市の経済・金融関係帳簿や商人・流通業者の経営関係史料の収集・分析を進めていき、学会報告や学術論文というかたちでの成果の公表を目指す。 ただし、新型コロナウィルスの流行によって、遠隔地への史料調査が困難になる可能性がある。そのため、1年目に収集した史料のデータ整理・分析に一層注力するとともに、筆者が居住する岡山県内の関係史料(備中国南部(岡山県南西部)の地方都市における商人・流通業者の文書群など)の収集・分析を先取りして進めることも視野におき、状況に応じて研究を進めていく。 これらの史料の分析をもとに、近代移行期における地方都市の内部構造、商人・流通業者の商品流通機能と金融機能の変容過程を明らかにする作業に継続して取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
筆者は、2020年3月5日にたつの市立龍野歴史文化資料館(兵庫県たつの市)での史料調査を計画していた。しかし、新型コロナウィルスの流行を受けて、所属研究機関でもイベントの中止などが相次ぐ状況となり、筆者も史料調査のためとはいえ県外に出張するべきではないと考えるようになり、史料調査を中止した。そのため、次年度使用額が生じることとなった。 次年度使用額については、研究に必要な書籍類の購入や、新型コロナウィルスの流行が沈静化した後、たつの市立龍野歴史文化資料館などに史料調査に行く際の旅費として使用することを計画している。
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