研究課題/領域番号 |
19K13338
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
國分 航士 九州大学, 人文科学研究院, 講師 (20734669)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本近代史 / 枢密院 / 議会政治 |
研究実績の概要 |
本研究は、近代日本において議会政治が定着する過程を、統治機構としての天皇と議会の関係に注目し、明らかにすることを目的とする。 本年度は、衆議院・貴族院の二院制を採る帝国議会と、「第三院」として作動する天皇の顧問府・枢密院や天皇との関係について、主に考察を行った。具体的には、緊急勅令や緊急財政処分など、法律制定や予算審議といった議会の権限と競合する大日本帝国憲法の規定に注目し、緊急勅令・緊急財政処分の運用過程を枢密院の役割に留意して検討した。 前提となる資料として、国立公文書館所蔵「枢密院関係文書」、宮内庁書陵部宮内公文書館所蔵「特定歴史公文書等」などの枢密院に関する公文書、および各機関に所蔵されている枢密院関係者の個人文書の調査を進めた。特に「枢密院関係文書」については、文書行政という観点から資料群としての理解を深めることをめざした。また、枢密院に関する同時代の批評、緊急勅令・緊急財政処分をめぐる法解釈など、書籍や雑誌、新聞に掲載された論考類の収集作業を行った。さらに、緊急勅令・緊急財政処分の運用については、実施されたもの以外にも、検討された事例や廃案となった事例も取り上げ、議会と枢密院および内閣、天皇・宮中との間で、どのような議論および処理がなされたのかを分析した。こうした検討を通じて、議会と枢密院の競合関係のみならず、枢密院が明治立憲制の「議会制」のあり方を担保するという側面を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
枢密院および緊急勅令・緊急財政処分の運用については、ある程度、体系的な理解を深めることができた。ただし、計画段階で想定していた2020年1月~3月の東京都での資料調査を十分に行うことができなかったため、予定していた資料の調査が完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、主に帝国議会の役割をめぐって、天皇・内閣・議会の関係がどのように変遷していったのかを検討する。今年度の計画に関わる調査について、完了していないものについては、引き続き継続すると共に、研究成果の公表準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料調査の機会を、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、計画段階で想定していた通りに実施することができなかった。 次年度以降の旅費に充当することで対応する。
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