本研究は、近代日本において議会政治が定着する過程を、統治機構としての天皇と議会の関係に注目し、明らかにすることを目的とする。 本年度は、昨年度までの作業を継続し、これまで収集した史料の読解、整理を進めるとともに、宮内庁書陵部宮内公文書館、国立公文書館などで史料調査を行った。特に、明治期から昭和戦前期の天皇・宮内省などへの請願について、請願書の件数、件名・内容、処理内容などの情報の収集・整理を進め、総体的な理解を深めた。また、国立公文書館所蔵「枢密院事務関係文書」などの研究期間中に新たに公開された史料の調査を行った。 本研究を進めていく中で、特に、帝国議会における内閣・大臣への信任・不信任のあり方、内閣による議会の解散については、慣習の形成をはじめとして、議会政治の展開および天皇・内閣・議会との関係を考察する上でも重要な要素であることをあらためて認識することができた。この視点は、とりわけ、大正後期の第二次護憲運動における政党や議会の天皇・宮中に関する論議の詳細を明らかにすることで得られたものである。 ただし、宮内公文書館をはじめとした史料所蔵機関での調査については、研究期間中に新型コロナウイルスの流行の影響を大きく受け、研究計画作成時に想定していたよりも利用機会が制限されたため、不十分なままである。今後も追加の調査を進め、研究成果の公表を進めて行く。 なお、本年度では、本研究課題を遂行する上で得られた、天皇・皇室制度に関する知見の一端については、立憲君主のあり方を中心に、比較史的な観点から研究報告という形で公表することができた。
|