研究課題/領域番号 |
19K13345
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
古波藏 契 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (90834606)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 沖縄近現代史 / 経済史 / 社会運動史 / キャラウェイ旋風 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、1960年代前半の沖縄を対象として、米国の沖縄に対する政策形成の過程と、住民側の抵抗運動の形成過程、および、それらの相互関係の解明を目的とするものである。使用資料としては、米軍当局の内部資料の他に、民間で所蔵された資料も重視している。特に法政大学沖縄文化研究所に所蔵される中野好夫資料の収集と分析に力を入れている。米軍統治下沖縄から収集した資料群で構成される同コレクションは、時間の経過に伴い劣化が進んでおり、直接手に取って閲覧することが困難となっている。そのため、同コレクションを使用に際しては、研究所の強力の下、電子化処理を施しながら進めるかたちとなる。本年度は、主に労働・農業関係資料を中心に収集した。 本研究課題における重要なテーマは、1960年代前半期に高等弁務官(在沖米軍当局の長)の地位にあったポール・C・キャラウェイの沖縄統治政策の基本的な性格を明らかにすることである。先行研究において、キャラウェイ施政は、住民自治への不信や、「キャラウェイ旋風」として知られる金融界の粛清など、強権的な性格によって特徴づけられてきた。他方、その施政期には、労働組合に対する統制の緩和をはじめ、住民の自主的な活動の範囲が拡大される面もあり、一概に評価できない複雑さがある。 こうしたキャラウェイ施政期の複雑な性格は、同時期に本格的に形成され始める日本復帰運動の性格を検討する上でも不可欠と言える。本研究課題では、米側内部資料や中野資料を用いて、キャラウェイ施政の実像を具体的に分析を進めている。特に本年度は、「キャラウェイ旋風」の先駆けとなった「農連事件」を中心的な検討対象に取り上げ、資料調査を進めている。 しかし2月以降は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い資料所蔵機関が閉鎖されているため、資料調査は中断を余儀なくされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は主に資料調査に充てる予定であったため、2月以降の新型コロナウイルス感染症の流行に伴う史料所蔵施設の閉鎖によって大きな影響受けている。 上半期には、主に法政大学沖縄文化研究所が所蔵する中野資料の整理・収集に取り組んだ。沖縄現地で発行された資料の他、日本本土の新聞をはじめ、邦字資料の収集を行った。また、関連して、沖縄県公文書館所蔵の邦字・英字資料の収集を実施した。 2月以降、こうした実地での資料調査が不可能になったため、電子資料や遠隔複写サービスを利用して研究を進めている。しかし、代替的な収集方法には限界がある。中野資料の収集については、中断を余儀なくされている。また、研究成果発表の機会も減っている。 以上のことから、本年度の研究進捗状況は、やや遅れていると判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新型コロナウイルス感染症の収束状況に応じて、柔軟に研究を遂行する。 対面での聞き取り調査や、海外渡航を伴う資料調査等については、当面の間、実施を見送る。国内の資料調査については、遠隔複写サービスを利用しつつ、最低限度の実地調査を行うことで可能な限り当初の計画に沿った研究遂行を目指す。 当面は昨年度中に収集した資料の整理・分析に注力する。資料所蔵機関が通常の運営体制に戻るのを待って、予定された資料調査を実施する。 研究テーマとしては、昨年度から引き続き「農連事件」の分析を進める。下半期には研究成果の発表を行いつつ、「キャラウェイ旋風」およびキャラウェイ施政の全体像の究明に軸足を移していく。それに伴い、米軍当局の内部資料の本格的な収集・分析が必要になることが予想されるため、収束状況を見つつ在沖・在米調査の実施についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い資料所蔵機関が閉鎖され、予定していた資料調査が実施できなくなったため。
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