研究課題/領域番号 |
19K13347
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
廣木 尚 早稲田大学, 大学史資料センター, 講師(任期付) (00756356)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 史学史 / 日本歴史地理学会 / 歴史地理学 / 郷土史研究 / フィールドワーク |
研究実績の概要 |
本研究は、1899年設立の日本歴史地理研究会(後の日本歴史地理学会)を主な対象に、20世紀初頭に形成された全国的な歴史研究者ネットワークの実態と、その活動がアカデミズム史学と地域の歴史意識の双方に与えた影響を解明することを目的としている。 二年目にあたる2020年度は、研究計画では、上半期は前年度に引き続き、本研究の基幹史料である日本歴史地理学会の機関誌『歴史地理』を用いた基礎的データの整理・分析を行い、下半期は研究の第二段階として、特定の事例に着目した歴史研究者間の交流の具体的把握を行うことになっていた。具体的には、下半期に、熊本市・金沢市での出張調査を実施する予定だったが、コロナ禍の発生により出張調査が困難となったため、この計画は大幅な修正を余儀なくされた。 そこで、2020年度は、上半期は計画通り第一段階の作業を行い、下半期は研究計画における第三段階、すなわち、研究成果の総合を前倒し、第一段階の成果のみを総括した学術論文を執筆することとした。その成果が、『日本歴史地理学会と吉田東伍 上』(『早稲田大学史記要』52)である。この論稿は、創立から1910年代までの日本歴史地理学会の組織と活動状況、在野の歴史研究者との関係、幹部会員の活動、議論の内容等を整理・分析したものである。これによって、本研究の対象時期における日本歴史地理学会の独自性、及び歴史学界における位置を一定程度把握することができた。 『歴史地理』誌上で展開された同会の研究・議論の動向は、多くの在野研究者を含む、同会会員の志向に規定されたものと考えられる。したがって、上記の成果は、結果的に本研究の最終目的である①全国的な歴史研究者ネットワークの実態、及び、②そのアカデミズム史学と地域の歴史意識に対する影響を解明する上での一階梯をなすものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記「研究実績の概要」欄にも記載した通り、本研究の2020年度の当初目標は、①日本歴史地理学会の機関誌『歴史地理』を用いた基礎的データの整理・分析、及び、②特定の事例に着目した歴史研究者間の交流の具体的把握を行うことであった。しかし、コロナ禍により出張調査が実施できず、②の作業は2021年度に繰り越すこととなった。他方、当初の計画では2021年度に実施予定だった研究成果の総合を、一部前倒しして実施したため、全体の進捗状況は大幅な遅れを来たすまでには至っていない。2021年度、②の作業を無事行えれば、当初の目標を達成できるものと見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、①全国的な歴史研究者ネットワークの総体的把握、②地域の側から捉えた事例研究、③アカデミズム史学への影響の3課題に分節化できるが、この内、②の進捗が遅れている状況にある。コロナ禍の収束を待って、熊本市・金沢市での出張調査を伴う②の課題を再開する。この調査結果と2020年度の成果を総合し、本研究の目的を達成したい。 なお、コロナ禍が長期化し、出張調査が実施できない場合は、その分のエフォートを日本歴史地理学会の主要会員である喜田貞吉に関する調査に充当する。豊富な資料が存在する喜田について調査を深めることで、間接的に②の課題に迫ることができるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の発生により、当初予定していた出張調査を見合わせたため。
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