(a)大化以前の大土地所有との比較研究・・・2019~20年度は大土地所有の展開過程について考察し、2021年度は律令制下の墾田法の展開過程について検討を進めた。2022年度は以上の成果をもとにしつつ、「初期荘園」の特性についてまとめた。この成果は、次年度に公表予定である。また、書評1本を発表して大化前代の大土地所有についての見解を示した。同様に8世紀の墾田法に関する評価を含む書評を次年度に公表予定である。 (b)地域史料の集約的研究・・・2019年度は兵庫県たつの市・赤穂市・太子町等、奈良県五條市、福井県福井市・坂井市等での現地調査を実施したが、2020~21年度は新型コロナウイルスの影響で現地調査の実施が困難となり、文献資料を中心とした越前・越中の東大寺領荘園に関する検討を進めることになった。2022年度には、富山県富山市・入善町・滋賀県大津市等における古代荘園の故地や古代遺跡の現地調査を実施し、あわせて富山県埋蔵文化財センター・富山市考古資料館・奈良国立博物館(正倉院展)・飛鳥資料館・群馬県歴史博物館・大津市歴史博物館・佐野市郷土博物館・那珂川町なす風土記の丘資料館等にて関連する出土遺物の実見調査を行った。美濃・飛騨地域の地域情勢について2021年度より検討を進めたが、2022年度には飛騨地域の立国について論文をまとめ、次年度に公表予定である。 (c)その他・・・2019年度より、古代の荘園が変質して中世的荘園が成立していく画期である11世紀中葉の中央・地方の政治情勢について、同時期の古記録を中心として共同研究を進めており、2022年度も論文1本(共著)を発表した。また、2022年度には土地経営や地域社会に関係する古代の人物について検討し、著書2冊(共著)を発表した。
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