研究課題/領域番号 |
19K13353
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
横山 尊 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究者 (20712152)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 禁酒運動 / メディア / 教育 |
研究実績の概要 |
本研究を遂行するため、本年度も日本禁酒同盟資料館旧蔵資料を所蔵する武蔵野大学、日本禁酒同盟資料館の所蔵の多い安藤記念協会の資料調査とその収集を行った。加えて、敗戦後のAA運動(アルコール中毒者の自助運動)や新生活運動と禁酒運動との関連性を考察する材料を集めるため、全日本断酒連盟、国際基督教大学、日本家族計画協会、国立国会図書館でも資料調査を行った。 本研究を開始してから、戦前の『禁酒新聞』など禁酒メディアの目次データベースの作成を手掛けてきた。本年度は、戦前の『禁酒新聞』の目次のデータ入力の大部分が完成するに至った。加えて、雑誌『禁酒之日本』や児童禁酒雑誌『のぞみの友』の読解を進め、その目次のデータベース化も検討している。 本研究の関連業績として、「山本作兵衛、ヤマの禁酒会に入る」(『西日本文化』 499号、2021年7月)、「「禁酒工場」日本足袋、「絶対禁酒家」石橋正二郎-昭和初期の久留米の禁酒運動」(『西日本文化』502号、2022年4月)を発表した。 日本の禁酒運動とも関係の深い優生学について、論文「出生前診断の歴史と現在―自発的優生学の系譜」(『日本健康学会誌』87巻4号、2021年7月)を発表し、この内容も禁酒運動研究の成果が一部盛り込まれている。加えて、現在、新修宗像市史編集委員会で新修宗像市史の作成にも関わっており、『新修宗像市史―いくさと人びと』の近現代部分の原稿を執筆し、本稿の中に、禁酒運動研究の成果も一部盛り込んだ。この内容は来年度中に刊行される。 さらに、日本の禁酒文化に加え、飲酒文化まで知見を拡げ、近現代のみならず、前近代や世界史的動向に関する研究を広く学び、本研究に役立てることも心掛けた。その成果を、筑紫女学園大学の「日本文化論」で「〈飲酒と禁酒〉の文化論―日本と世界」というトピックを立てて講義し、研究活動の成果を大学教育にまで反映させる試みも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究期間: 2019年4月~2022年3月であるが、来年度まで延長することにした。2020年以降、コロナウィルス蔓延のため、福岡県外での調査の多くは不可能となり、学会発表等も予定変更や自粛を余儀なくされたからである。 それでも、本課題遂行の基礎作業は、相当の進展があった。日本国民禁酒同盟が刊行した『禁酒新聞』の目次のデータベースを初年度から作成してきたが、作業は順調に進捗し、今年度は、同新聞の戦前分のデータベースはほぼ揃った。日本近現代史の史料情報に大きく寄与すると思われる。来年度はその公開作業に取り組む予定である。加えて、雑誌『禁酒之日本』や児童禁酒雑誌『のぞみの友』の読解やデータベース化も検討している。 本研究の成果の一部は雑誌で発表された。西日本文化協会の依頼を受け、「山本作兵衛、ヤマの禁酒会に入る」(『西日本文化』499号、2021年7月)、「禁酒工場」日本足袋、「絶対禁酒家」石橋正二郎」(『西日本文化』502号、2021年3月)などを発表した。 さらに、敗戦後の禁酒運動と広義の社会教育にも研究的関心が広がった。特に禁酒運動とAA運動(アルコール中毒者の自助運動)との関連、新生活運動との関連などの調査を行うなど、研究的知見は確実に広がっている。その成果は来年度に学会発表や論文投稿などのかたちで反映することにしている。 上記を鑑みれば、当初の計画以上に大きく進展したとは言い難いものの、おおむね順調に進展していると評価して差支えないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本研究の最終年度に該当する。そのため、成果報告書の作成に着手する。その内容には、本年度概ね完成している、戦前の『禁酒新聞』に加え、その他の媒体の目次データベースなどが含まれる。同分野の研究の基礎的情報の裾野を拡げるうえで大きく貢献するであろう。 さらに、本研究の成果を複数の学会で報告する。すでに、2022年5月は日本科学史学会で研究報告「禁酒運動と新生活運動―敗戦後日本の動向とその系譜」を報告する予定であり、6月は、メディア史研究会月例会で、「昭和戦前期の禁酒メディアの性格-『禁酒新聞』を中心に」(仮題)を報告する予定である。これ以外にも来年度は学会報告を複数行うことを検討している。さらにその成果を研究論文としてまとめ、投稿することは当然であり、その準備も進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年以降、コロナウィルス蔓延のため、福岡県外での調査の多くは不可能となり、学会発表等も予定変更や自粛を余儀なくされたからである。
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