研究課題/領域番号 |
19K13354
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
横山 恭子 富山高等専門学校, その他部局等, 講師 (50759165)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日朝関係史 / 朝鮮通信使 / 対馬宗家文書 / 商人請負制 / 盛岡藩南部家 |
研究実績の概要 |
令和2年度(若手研究2年目)においては、研究課題「朝鮮通信使迎送体制と商人請負制の展開」に関する国内史料調査として、盛岡藩南部家の藩政記録『雑書』(翻刻版)の閲覧・複写・分析を行った。盛岡藩南部家は近世を通じて陸奥国北部に10万石の領地を有した外様大名で、この石高を基準として、朝鮮通信使の行列通行を支える乗馬役等を担った。 『雑書』第4巻、第10巻、第11巻、第20巻、第25巻、第40巻の中には、天和2年(1682)から文化5年(1808)にかけて、通信使来訪の年に盛岡藩の担当した諸々の事柄が、確認できるだけでも53項目記録されている。特に正徳元年(1711)については13項目、享保4年(1719)の場合は20項目と、新井白石主導による乗馬役負担方式の改変の影響で、徳川幕府から盛岡藩へも、多くの通達が届いていたことが明らかになった。 具体的には天和次の段階で、鞍置馬3疋・鞍皆具6疋分を、江戸・三嶋間(往復)へ派遣するものであったが、正徳次には鞍置馬のみ4疋を江戸・三嶋間(往復)へ、享保次にも鞍置馬のみ4疋を、江戸・舞坂間(下向のみ)に派遣するものへと徐々に変化しており、盛岡藩の負担内容が幕府の負担方式に沿ったものであることが確認された。 延享次以降は、史料が少ないものの、宝暦次の乗馬役について「朝鮮人送馬請負之節」と、大名家の負担分に、明らかに商人請負制の影響していることがわかる。大名課役として賦課されたものに、どのような方法・手順で請負商人が介入しているか、今後は『雑書』から読み取れる盛岡藩の事例をもとに、他藩の史料や幕府関係史料を再確認し、関連史料を収集する作業が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度の研究課題を進めるに当たり、主に実施したことは、①研究成果の公表・原稿執筆と②国内史料調査(文献調査・複写・分析)である。本来2年目に予定していた海外史料調査、韓国国史編纂委員会所蔵『対馬宗家文書』の閲覧・複写については、海外渡航の自粛・制限のため先延ばしとし、主に岩手県立図書館において、確実に閲覧可能な文献史料、盛岡藩の藩政記録『雑書』を網羅的に通読、関連部分の複写・分析を行った。今後、これらの論文化・原稿執筆を進めるとともに、国内における原本閲覧可能な史料所蔵機関から、順次、史料調査を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度においては、①研究成果の公表・原稿執筆、および②国内史料調査(原本閲覧・撮影・複写)を並行して行う。昨年度までは、全般的に史料所蔵機関の臨時閉館・休館など研究利用の停止措置が続いていたが、予約制をとるなど部分的に緩和されつつある。今年度は新型コロナウィルス感染対策の状況を注視しながら、研究者受け入れを再開した長崎県対馬歴史研究センター(長崎県立対馬歴史民俗資料館から改称)での『対馬宗家文書』一紙物の閲覧・撮影を中心に、重点的に史料調査・解読作業を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度においては、予定していた海外史料調査が実施できず、出張計画等に変更が生じたため、令和3年度以降に使用を持ち越さざるを得なくなった。今年度は、新型コロナウィルス感染対策の動向を見極めながら、国内史料調査およびオンラインを含めた学会発表を再開し、対応可能なものから臨機応変に研究活動を進めていく。
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