研究課題/領域番号 |
19K13357
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研究機関 | 神奈川県立金沢文庫 |
研究代表者 |
三輪 眞嗣 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 学芸員 (30829297)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 東大寺 / 華厳 / 尊勝院 / 久米田寺 / 称名寺 / 金沢文庫 / 湛睿 / 律僧 |
研究実績の概要 |
本年度は刊本史料集の購入を含む史料収集とその分析を進めた。 本研究で解明に取り組む鎌倉期の華厳教学の展開について、華厳宗の本所であった東大寺尊勝院と、華厳教学が展開した地域寺院としての和泉国久米田寺の二寺院を対象として研究を進めた。 東大寺尊勝院については、院政期から鎌倉期まで尊勝院で開催されていた仏教論義である探玄記三十講の内容を記録した日記の分析をおこない、当該期における同院での修学状況の一端を明らかにすることができた。三論宗の本所であった東南院に比べ、実態がほとんど不明であった尊勝院における修学状況の解明に着手し、一定の成果を得られたことの意義は大きいといえる。なお、東大寺関係史料については本研究開始以前から史料収集を進めていたこともあり、本年度では東大寺図書館での史料調査は一回にとどまった。 次に、華厳教学の地方展開について、和泉国久米田寺(大阪府岸和田市)を事例とした研究を開始した。久米田寺に伝来し、すでに史料集として刊行されている「久米田寺文書」に加えて、金沢文庫が管理する「称名寺聖教・金沢文庫文書」中の久米田寺関係史料を検討し、鎌倉時代後期における久米田寺や関東の律寺で活動していた律僧たちの事績や寺院経営を明らかにした。また、東京大学史料編纂所における久米田寺関係史料調査を基にして、多和文庫(香川県)に所蔵される久米田寺関係文書の検討をおこなった。以上の久米田寺に関する研究成果を論文「和泉国久米田寺の律僧集団についての予備的考察」としてまとめ、『金沢文庫研究』344号で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鎌倉期における華厳教学の重要拠点であった東大寺尊勝院と久米田寺の実態解明を進めた。 前者については、尊勝院における論義法会を記録した日記の収集と分析を進め、院政期~鎌倉期における法会の状況と、その内容や参加者を明らかにできたことで、尊勝院の実態解明が進展した。 後者については、金沢文庫中の史料や他機関所蔵の関係史料の収集・分析に注力した結果、久米田寺の研究が当初の想定以上に進展した。 以上のように、本研究の二本柱といえる二寺院の研究において一定の成果を得られたため、順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き関係史料の収集・分析をおこなう。2019年度は遠方での史料調査を実施することがほとんどできなかったため、次年度は東大寺をはじめとする関西方面での史料調査を複数回実施することを目指す。 東大寺での史料調査は年に数回おこない、華厳宗の本所であった尊勝院に関する研究に注力する。特に尊勝院の学侶の動向とともに院主についての基礎的研究を進めたい。 久米田寺に関しては、引き続き金沢文庫資料の博捜に努めるとともに、既知の史料の分析も合わせて進めていきたい。また2020年度には久米田寺および周辺地域の現地調査を予定している。
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