研究課題/領域番号 |
19K13360
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研究機関 | 九州歴史資料館 |
研究代表者 |
渡部 邦昭 九州歴史資料館, 文化財企画推進室, 研究員(移行) (00615825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 戦時行政 / 地方行政協議会 / 地方総監府 / 九州 / 福岡県 / 内務省 / 長崎原爆 / 終戦 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、研究目的である戦時期の地方内政・軍政の解明の内、内政部門に当たる九州地方行政協議会・九州地方総監府(以下、協議会・総監府)の調査を進め、ほぼ完結させた。特に内政部門研究の最終段階として、協議会・総監府の構想と実態について、国立国会図書館所蔵史料や地元紙『西日本新聞』に加えて、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県の公文書等も閲覧して調査している(佐賀県、鹿児島県、沖縄県は該当史料なし)。その結果、以下の研究成果を得た。 まず協議会・総監府の構想(制度設計)に関しては、概ね先行研究を踏襲するものの、地方総監府に関しては九州が本土決戦の戦場として特に意識されて制度設計された可能性を指摘した。 次に協議会の実態について、各会議の日時、出席者、議題、決定事項等をまとめた一覧表を作成し、協議会の具体像を捉えた。その結果、食糧生産、労務調整、木造船建造、防空防衛などさまざまな分野で県の枠を超えた議論が展開され、特に協議会の当初目標であった「府県ブロック打破」の動きも確認している。一方で、協議会で決定された事項の実行を示す史料は少なく、九州全体の物資不足もあって協議会の活動成果は当時から不十分と認識されていたこと、その打開策としてより強力な九州統括機関の設置が提言されていたことを示した。 総監府の実態については、協議会から引き継いだ生産促進などの分野では総監府も大きな改善を果たすことはできなかったが、一方で長崎原爆時の救援や終戦処理に際しては少なくない役割を果たしており、非常時の九州統括機関として一定の存在意義はあったことを明らかにした。 以上の協議会・総監府に関する研究成果を『九州歴史資料館研究論集48』に投稿し、掲載された。これを以て内政部門に関しては、予定していた研究を概ね完了した。また研究開始以来の成果をまとめた講演会を、研究代表者が勤務する九州歴史資料館で開催している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、令和2年度から3年度にかけて移動自粛が発生し、研究に大きな支障が出たことによる。研究実施計画の内、内政部門(九州地方行政協議会・九州地方総監府)については令和4年度に大きく研究を進展させ、当初の研究計画を概ね完了させたが、一方の軍政部門(西部軍管区司令部・第十六方面軍司令部)の調査は殆んど進行させることができなかった。これは内政部門研究に時間を集中させたため、防衛省防衛研究所での文書調査が進展しなかったこと、新型コロナウイルス感染症の余波で、研究協力者と行う調査をめぐる環境が大きく変わり、その支援によって行う予定であった福岡県筑紫野市所在の司令部壕GPS測量を実施できなかったことなどによる。 以上の点から、内政部門に関しては4年度で遅れを回復したものの、軍政部門については進展が困難な状況が続いており、総合的に考慮してやや遅れている。そのため本来は令和3年度が研究の最終年度ではあったが、遅れている現状から、4年度に引き続き研究実施期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症対策の緩和と、内政部門研究の完了に伴い、令和5年度は戦時軍政関係の調査を実施する。特に、西部軍管区司令部・第十六方面軍司令部に関して、防衛省防衛研究所史料等の文献資料の調査を引き続き実施し、文献資料関連に重点を置いてこの分野の調査完結を図ることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来予定していた西部軍管区・第十六方面軍司令部のGPS測量等が、新型コロナウイルス感染症拡大による研究協力者との連携状況の変化等で実施できなかったことが主たる理由である。今後はGPS測量の実施について検討しつつ、防衛省防衛研究所所蔵の文献資料等の調査も組み合わせて実施可能な調査を行い、研究実施計画を進めていきたいと考えている。
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