本研究の目的は、アッシリア王の業績を詳細に記録した「王碑文」において、どのような技術や方法を用いて「強い王」が表象されたのかを明らかにすることにある。令和元年度は、研究課題「王碑文における不都合な事実の書き換えと削除」に取り組んだ。具体的には、王室書簡を基にアッシリアが諸外国と行った外交にかんする事例を収集し、それらの外交が王碑文においてどのように記録されたのかを調査をした。その結果、アッシリア王が他国に対して譲歩したと見なされ得る外交は、「強い王」の表象にとってネガティブに作用するため、他国がアッシリアの属国になったかのように書き換えられたり、あるいは出来事自体を記録しないことによって隠蔽されていたことが明らかとなった。
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