アッシリア王碑文は、王室イデオロギーに基づいて作成されたため、記録の中から歴史的事実に近いと考えられるデータを引き出すためには、王碑文を作成した書記がアッシリア王を「強い王」として表象した技術全般を解明する必要がある。これを目的とした調査を行った結果、アッシリアが他国に譲歩した外交や戦闘における敗北などのネガティブな出来事が事実の「書き換え」や「黙殺」によって隠蔽されていたことが明らかになった。また、文学作品の技法を使用して王を叙事詩に登場する英雄のように表象していたことや、王の軍事的な功績が数の操作などによって誇張されていたことが判明した。
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